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「私大の方を『京芸』『京都芸大』と呼ばないで」 市立芸大働きかけ

2021年10月11日 | 京都ニュース

2021年10月11日 8時0分 毎日新聞
参照記事
https://news.livedoor.com/article/detail/21007863/

京都市立芸術大



私立京都芸術大


 「私立京都芸術大を『京芸』『京都芸大』と呼ばないで」。京都市立芸術大(西京区)が企業や報道機関に対し、こう働き掛けを強めている。私立京都芸術大(左京区)とは大学の名称を巡り、訴訟までして争った間柄。確かに訴訟では、これらの略称を京都芸術大は使わないという和解が成立しているのだが、第三者が勝手に使うのまでは禁止していない。「京芸」「京都芸大」への市立芸大のこだわりが際立つが――。

 両大学の名称を巡る争いは、約2年前にさかのぼる。学校法人「瓜生山学園」(左京区)が2019年6月から、運営する旧京都造形芸術大を文部科学省の許可を得て京都芸術大に20年度から改称する、という方針を市立芸大側に説明し始めたことが端緒だった。

 この動きに反発した市立芸大は19年9月、「混乱を招く」などとして、同学園に「京都芸術大学」の使用差し止めを求め、大阪地裁に提訴。判決が言い渡される直前の20年8月には、「京都芸術大学」の名称の使用差し止めを、同学園に求める仮処分を大阪地裁に申し立てる(後に取り下げ)など、徹底して争う姿勢を見せていた。

 これに対し、大阪地裁は20年8月の判決で「『市立』という言葉の有無で両大学を区別でき、類似しているとは言えない」などと市立芸大側の請求を棄却。判決を不服として、市立芸大側は大阪高裁に控訴したが、21年7月に和解が成立した。

 和解では、同学園が「京都芸術大学」の名称を使えると明記。半面、同学園が「京芸」「京都芸大」の略称は使わず、商標登録を出願しないことも盛り込まれた。ただ、両大学と関係ない第三者の企業などがそれぞれの判断で、京都芸術大を「京芸」「京都芸大」と略して使用しても問題はないという内容だ。

 にもかかわらず、市立芸大は和解に至る前から、第三者が京都芸術大を「京芸」「京都芸大」と呼ばないよう働き掛けてきた。

 具体的には、報道機関宛てに20年5月、21年1月、同9月の3回にわたり「混乱が生じる懸念がある」などとして、京都芸術大の略称に「京芸」「京都芸大」を使わないことなどを文書で要請。OB・OGなどから「京芸」「京都芸大」の略称が使用されている具体例が寄せられる中、京都芸術大を指して使っていた複数の企業などに接触し、使用しないよう要請してきた。

 第三者への働き掛けについて、市立芸大は毎日新聞の取材に「和解について知らない企業もある。事例があれば和解を説明し、協力をお願いしている」と説明。門川大作市長は和解成立後の21年7月、記者団に「大事なのは卒業生はもとより多くの市民に親しまれている略称を、うち(市立芸大)しか使わないことだ」と強調する。

 ただ、ある市政関係者は「『京都芸大』などより『市芸』の方が定着しているのでは」と指摘。市立芸大が略称にこだわる背景を「『負けの方向』ともいえる訴訟の結果を、市立芸大のOB・OGに納得してもらうねらいもあるのでは」とみる。

 別の市政関係者は「伝統的な芸術教育をしてきた市立芸大と、新しい分野にも取り組む京都芸術大とでは、大学の方向性が違うのでは。『この略称を使ってはだめ』という言い方ではなく、大学の特色と略称を堂々とアピールすれば良いと思う」と市立芸大に促す。

 知的財産の問題に詳しい中世古(なかせこ)裕之弁護士(京都弁護士会)は「『京芸』『京都芸大』を京都芸術大の略称として使用し、混乱を招こうという意図が第三者の企業側にあるのはまれだ。指摘を受けた企業は、違和感を抱くかもしれない」と指摘する。一方、市の今回の働き掛けを「大学のブランディング戦略の一環という解釈はできる。今後は略称を定着させ、大学の認知度やブランド力を高める必要があると判断したのでは」と推し量る。

 和解後も名称を巡り奔走する市立芸大に対し、京都芸術大は毎日新聞の取材に「本学としては、それぞれの大学をどう呼ぶかは、市民の皆さんが自由に決められることだと考えている」とのコメントを出した。

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