モノ作り・自分作り

東横線 元住吉 にある 絵画教室 アトリエ・ミオス の授業をご紹介します。
美術スタッフが、徒然に日記を書いています。

時空を超えて存在する世界

2014-09-20 01:45:00 | 大人 油絵・アクリル
Matuohime松尾 『大三島』 油彩 F15号

第1、第3土曜日大人クラスの京谷です。

10月の展覧会出品作品搬入締め切りの日まで、もう本当にあとわずか。
本日も続々と生徒の皆様が、それぞれの作品を提出していらっしゃいました。
かくいうこの私めも、皆様に混じって初めての参加でございます。どうぞよろしくお願いいたします!

さて、本日ご紹介させていただきます作品は、松尾さんの油彩画『大三島』です。
画面に展開される物語のひとコマ。その緻密な描写にまず魅せられてしまうのですが、やはりこの作品の背景について若干の予備知識が必要でしょう。
歴史好きな方でしたら、きっとその名に馴染みのあることと思います。

 『鶴姫(つるひめ、大永6年(1526年)? - 天文12年(1543年?))は、戦国時代の伊予国にいたとされる伝承的女性。姓名は大祝 鶴(おおほうり つる)。大山祇神社(愛媛県大三島)の大宮司・大祝安用(おおほうり やすもち)の娘。』

この「鶴姫さま」が作品の主役でありますが、ウィキペディアによりますと、三島安精の小説「海と女と鎧」では、瀬戸内のジャンヌ・ダルクとして脚色・執筆されているとのこと。幼い頃より武術や兵法を習得して、紺糸裾素懸威胴丸(こんいとすそすがけおどしどうまる)という甲冑を身に纏い、颯爽と戦場を駆け巡る。伝承人物ですので諸説ありますが、戦場で亡くした恋人を偲び、このお姫様が18歳の若さで入水し生涯を終えたという言い伝えでは、「わが恋は 三島の浦の うつせ貝 むなしくなりて 名をぞわづらふ」を辞世の句としたとされています。
この句を知って、再び松尾さんの作品世界に身を委ねてみますと、画面の四隅まで凛という音が聞こえてきそうな程の緊張感に、心が引き締まるような気がしました。鶴姫さまの美しい横顔は、イタリア・ルネサンス期のフレスコ画にも似て。意図してトーンを落とした色調や、暗い室内とは逆に明るいながらも不安な印象の背景がもつ光のコントラストは、お姫様の心の動きを雄弁に語っているようです。
松尾さんの作品の素晴らしさのひとつに、この心理描写をより説得力あるものにするための装置、風景や室内の描写の徹底したリアリズムがあります。畳のい草の一本一本の陰影や、使い込まれた廊下の光沢、鶴姫さまの黒髪の流れと切れた弓の弦。そして画面右端の暗闇に浮き上がる甲冑。彼女の右足から弓のラインを上っていく先の横顔の表情。その視線がより奥の風景へと、観るものを案内してくれているような構図。
2次元の画面のなか(キャンバス上)に、時空を超えた、こことは別の場所・世界が展開しはじめる。触れることはできないけれど、確かにそれは存在しているのだ、という気持ちをおさえることができません。
本当に完成度の高い作品です。

最後に・・・鶴姫さまのエピソードには他にもあるようですが、他のものはここでは割愛させていただきました。
松尾さんに、また色々とお話を伺ってみたいです。

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