油絵の具は、絵具の層を重ねることで絵に深みを出し、様々なマチエール(絵肌)を作ることで絵に空間与えていく画法ですので、それに応じて使う道具も色々あります。
筆には、毛の質と形にバリエーションがあります。
『毛質』
筆の毛質は、豚(硬毛)、イタチ、テン、馬(軟毛)、狸、牛、ナイロン毛(軟質)様々な動物の毛のタイプがあります。
ちなみに豚毛だけで描こうとするとなかなか絵を仕上げるのは難しいです(不可能ではありませんが)。なぜかというと、豚毛だけで描くと絵の中の質感が単調になりやすいからです。
油絵というものは画面内に様々な種類のマチエール(絵肌)をつくることで組み立てていくという特性があるので、硬毛と軟毛の筆を使い分けて描くのが基本です。(逆に一つ要素だけで描き、独特な雰囲気の作品を創る方もいらっしゃるかもしれませんが、ちょっと例外的です。)
それに、硬質な毛だけで描くと、描くと同時に一層目に描いた絵具層を削り取ってしまい、加筆しづらいこともあります。
『形』
また、筆には様々な形のものがあり、ざっと、フラット、ブライト(毛短平筆)、フィルバート、ショート(ロング)フィルバート、ファン(扇型)、ライナー(面相型)、ラウンド(丸筆)、ダガー(先端が斜めにカットされている)、アングル、ゴム質の筆、刷毛、などなどあります。
これは様々な絵肌を創るがために創られたのであります。
作家によっては、あえて自分で筆を折り、短くした筆で描く方もいます。その方が体にフィットするそうで、描きやすいそうです。どういった筆を使うのかも人それぞれですし、表現によって違うものですね。
絵画表現というものは、気持ちや情熱だけでは上手くいかないこともあります。
ちょっと技術面に変化を与えてみると、以外と簡単に描きたいイメージに近づくことが出来るかもしれませんよ。