駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

あなたもいつかは宇宙遊泳

2022年02月14日 | 人生
          

 三年前に往診から引退し患者さんを在宅で看取ることはしなくなったが、それまでに二百人ほどの患者さんを在宅で看取ってきた。長い患者さんは十年、短い患者さんは十日ほどで旅立たれた。
 幽明境を越えると誰が表現し始めたのか知らないが、本当にそうした境があると感じた。在宅の患者さんは幽明の境を一瞬で越えるわけではなく、宇宙遊泳のように重力の微弱になった空間の中をゆっくりあるいは高速で遠のいてゆかれる感じがした。お話ししながら地球の引力から解き放たれて十万億土へ遊泳が始まっている気配を感じたこともある。
 宇宙遊泳までは行かなくても、後期高齢者になると数センチくらい宙に浮いた感覚が出てくる。高齢者になる前はこうした感覚が分からず、高齢患者さんともう一つ話の歯車が合わなかったが、今は名前が出てこない夜小便に起きる2㎝に躓く首周りに皺と黒っぽい染みが出てくる・・新幹線ならぬ、お互い宇宙船の切符を持っていますねと話が分かりやすくなった。
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