駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

飴玉人たち

2019年05月16日 | 診療

                 

 

 五月晴れの下を出勤してきた。朝夕は暑くなくちょうどよい気温で庭先の花や緑が美しい。一口に緑といっても様々なグラデーションがあり微妙な違いが目を楽しませる。

 飴玉といえば子供のおやつで主役ではないが駄菓子屋の欠かせぬ定番だった。最近は駄菓子屋もなくガキ大将も居なくなり、見かけなくなったと思っていたのだが、思わぬ愛好者の出現でまだまだマートやスーパーで売られているらしい。コンビニにもあるかもしれない。どうして飴玉の話になるかというと、後期高齢の患者さんの中には飴玉中毒の人がいるからだ。

「先生、飴玉いくつまでならいいかね」と聞かれることがある。医学的にいくつまでなどと教科書に書いてあるわけではないが、「まあ六個くらいかな、多くても一日十個まで」などと答えている。糖尿病の人には三個までなどと厳しめにしている。勿論、これは目安で食事に差し支えないように、口寂しさを紛らわす程度ならと答えているのだが、聞くお婆さんも隠れて食べて妻に叱られているお爺さんも、一日十個ではおさまらない。一袋食べてしまうのだ。

「お爺さんは歯がいいからがりがり噛んでしまうんですよ」との報告に私に背を向けながら

「ミルク飴だからいいんだ」と、捨て台詞を残して診察室を出て行ってしまう。

「私は買わないようにしているんですよ、自分で買ってきちゃうんですよ」。と告げ口のような報告を受ける。

 人間の嗜好というものは不思議なもので、人さまざまな癖というか習性があり、いつの間にか杖のように生活に欠かせないものになってしまう。診察室で飴玉論争もなんだか大人げないような気がするのだが、私を懐柔しようというのかお友達の印か、先生もどうぞなどと飴玉一個を置いてゆく婆さんもいる。

 そういう私も引き出しのチョコレート玉を診察の合間に舐めている。患者さんの愚痴もとい訴えを聞くと疲れるので?。しかしこれが後を引いて、三日で一袋がなくなってしまう。

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