どうもいい年をして妙な趣味があり、電車では一番前で運転手と一緒に線路を見つめ、デパ地下では大判焼きが焼かれてゆく様子を見てしまう。
一列十個の四列を二十個づつ表と裏に分けて焼いてゆく。手際よさに見とれてしまう。餡子をたっぷり、誰が考案したのか四十センチばかりの筒に詰めそれを5センチ?幅で表側の焼き掛かった皮に置いてゆく。置き終わると裏になる皮を焼き始め、頃合いを見計らって餡の入った表側を被せてゆく。どうもこれが一番難しいらしく、二三個生焼け皮がはみ出してしまう。直ぐには補正せず、一寸焼けたらはみ出した皮を千枚通しのような道具で切り取り形を整える。
焼いているお兄さんは二十代後半か、見物人には慣れたもので全く気にせず黙々と手を動かしてどんどん焼いてゆく。買い手は八割方女性で、三個から十個くらい赤(小豆)白混ぜて買ってゆく。どうも小豆餡の方が圧倒的に人気のようで、三対一の感じだ。食い過ぎるなと思いつつ、今日は買ってしまった。赤四個白二個で、四個が私の胃袋に入りそうだ。甘みは控えめであっさりしている。今日は二個で我慢し、明日はチーンをして食べることにしよう。
毎日、肥満気味の患者さんに口を酸っぱくして注意しているのだが、人間は目の前の楽しみに自分に都合の良い言い訳を考えて、自分に甘くなる。食べてしまってからちょっぴり後悔している。しかしまあ、喉元過ぎれば取得した過剰なエネルギーはわき腹に蓄えられてゆくわけで、過ぎた後悔はないよりはうんと良いのだが、元には戻せない。次は三個で我慢しよう。