再生産能力は生物固有の機能なのだが、どうも人類の場合は再生産というと女性が主体で子育てというイメージがある。それは豊穣の神が女性であることに象徴されている。しかし再生産は子孫育成だけでなく、組織内でも強力に行われている。
勿論、男性も乳幼児を過ぎれば子育てをするのだが、組織内の再生産においては男が主導権を握って、組織生存に適した人間の再生産を行っている。再生産という言葉はあるいは露骨に響くかもしれないが、組織は組織が存続するように内部環境を整え外的環境に対してゆく自働能を持っている。そうして仲間を選別し育て組織を守る行動原理を人類は内蔵している。
こう書けばあまりに機械的で人間の尊厳がないがしろにされるように感じるかもしれない。しかし、こうした視点は人の動きを察知し理解するのに役立つだろう。矛盾しているようだが、こうした非情の視点を忘れずにいることが悲劇や破滅を防ぐ力になると考える。