駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

刺青の問題

2012年05月25日 | 町医者診言

    

 また橋下市長が特異な主張を繰り出している。私は仕事上、人知れぬ刺青の存在を知る機会が多いが、刺青があるからどうのこうのとは一概には言えないと感じている。それに刺青と言っても色々ある。部位大きさ構図は様々で、見事な倶利伽羅紋紋からどうみても中途半端なものや、刺青を消そうとした跡など、さまざまな事情が伺われる。勿論、刺青を見せて人を脅すような輩では愚か者の印と言うべきだが。

 「身体髪膚、これを父母に受く、あえて毀傷せざるは孝の始め也」。誠にその通りだ。しかし、古傷を暴いて査定するのはいかがなものか。色々な事情があってということもあるし、若気の至りということもあるだろう。刺青は消して元通りにすることが難しい。だからこそ、表沙汰にして烙印を押すのは行き過ぎに感じる。大体公務員はけしからん、民間企業なら宜しいというのはどういう理屈か、理解しがたい。

 私は刺青の意味合いや風習に詳しくはないが、刺青のある人を沢山見ているので、その経験から大阪市職員の調査や申告強制には違和感を感じる。まあ医者に掛かる時は、お世話になるという気持ちもあるのだろうか、刺青があるから怖いとか常識がないとかいうようには感じない。以前通院していた倶利伽羅紋紋の親分は、見るからに強面で背広を着ていても凄味のある人だったが、話せば穏やかで看護師になぜか人気があり、香港辺りに博打に行った帰りなど、お土産を頂いたこともある。

 どうも橋下氏の主張は極端鋭利で過ぎると感じる。正面切って反対しにくいことを金科玉条というか水戸黄門の印籠のように掲げて人を峻別する手法は胡散臭く危ういと思う。

 勿論、私は刺青のある人の肩を持つわけではない。唯、今真っ当なら差別せず受け入れる寛容の心が、社会の知恵と申し上げたい。

 

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする