駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

肉の焼き方

2008年11月24日 | 旨い物
 今日は山小屋でオージービーフステーキを焼いた。ステーキの焼き方にもいろんな流儀があるようだが、まず両面を強火で焼いて焼き目をつけてから、もう一度中火で両面を蒸し焼き気味に、1.5cm程度の厚みだったので、一分弱焼いた。オージービーフだからメディアムが旨いと思う。
 この最初強火で表面を焼くのは確か帝国ホテルの村上信夫さんがテレビの料理番組で言っていたと思う。そんなことをしない方が良いという記事も読んだことがある。どっちが正しいか、たぶん肉質にもよるので、一概には言えないのだろう。
 肉の味付けは上質のものなら塩胡椒だけでよい。中等の肉だとそれに僅かに味醂を加えた醤油系を少し、あまり上等でない場合はウースターソース系をで味付けすると旨いと思う。
 付け合わせは僅かに甘く下味をつけておいた人参と玉葱を残りの肉汁とソテーしたものだ。
 小屋の周りに伸びた雑木を切るちょいとした力仕事をした後なので、皆ほとんど無言で黙々と食べた。「これ新米だね。旨い」。とF氏が一声、飯を褒める。「よく分かったね」。
 満腹になったところでF氏が入れてくれるコーヒーを飲む。東南アジアに企業戦士として十年弱暮らした彼の入れるコーヒーは、いつも美味しい。ゲストのO氏に南氷洋捕鯨船に乗った話を聞きながらコーヒーをお代わりして散会。
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職人と統率者(リーダー)

2008年11月24日 | 小考
 職人を大量生産できない物を作る人あるいは大量供給できないことをする人と定義すれば、医師は職人に入ると思う。職人は微かにあるいは色濃く矜持を持つ、自分にしか出来ないという自負からか、能力を生かしているという使命感からか。職人の仕事は手で触れるような実体や実感を持ち、神が宿るという細部に関わる。不思議なことだが、職人は統率者(リーダー)にはならない、なれないと言った方が正確か。希に統率者になることがあるがすると職人ではなくなる。
 何か職人と統率者とでは相容れない資質が必要とされるらしい。統率者は一定の物を作ったり提供する人ではなく、状況に応じ判断し指示する人だ。統率者に必要なもの、それは何かと聞かれれば、いくつかの特質が上げられよう。人望とか信念とか決断力とか。確かにそれらは統率者(リーダー)に望まれる資質であるが、もっとも大事な能力は優れた大局観だろう。透徹した広い視野を持ち、進むべき方向と優先順位を違えないこと。優れた大局観こそリーダーに必須のものと思う。微妙なことだが優れた統率者は矜持よりも自信を備えている。
 権力の集中を恐れては組織を動かすことはできない。権力集中と民主主義は相容れないと思うのは錯覚。適当でない統率者を交代させることができる機構を内包するのが民主主義というものだろう。
 知ったようなことを偉そうに書いたが、毎日こつこつ一人一人の患者をみることしかできない職人医師としては、切実な感想である。
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現実のロシアンルーレット

2008年11月24日 | 医療
 ロシアンルーレットはリボルバーの拳銃に弾丸を一発込め、適当に弾倉を回転させてから、自分の頭部に拳銃を当てて引き金を引く究極の賭け事だ。退廃の極地、人間が度し難い存在である証拠だろうか。
 ところが現実にこのロシアンルーレット似た事態がある。結腸癌や肺癌のⅠ期(ある大きさの範囲の癌で転移の認められないもの)で完全摘出手術後、抗癌剤を使わないで5年経過をみると十から二十%の人に再発が認められる。再発すればまず根治は望めない。これらの患者さんにある抗癌剤を使用すると再発率が約十%減少する。つまり、抗癌剤の投与で十人に一人、再発を免れる人が出てくるわけだ。残念ながら現在の医療レベルでは、どの患者さんに再発が起こるかを前もって特定できないので、抗癌剤なしでも再発しない人にも抗癌剤を使用することになる。
 抗癌剤は高価だし、さまざまな副作用が出ることもあるのだが、あなたはどうしますかと聞かれると、ほとんどの患者さんは使用を希望される。自分は運が強いから十分の一の不運は免れるので、不要だと言われる方はほとんどいない。医学は日進月歩だから、近い将来には再発の予想が個別で可能になるかもしれない。しかし、それまでは何とも酷な選択をすることになる。
 癌の診断治療は進歩し40年前には死の宣告だったのが、今ではそうではなくなった。しかしその余塵だろうか、癌の宣告はまだ患者さんを従わせる力を持ち続けている。ところが、実際には高血圧や糖尿病も放置すれば癌と同じように10年後には十人に一人の命を脅かす恐ろしい病気なのに、血圧が高いと言われても、糖尿病があると言われても、馬耳東風と聞き流す人が多いのは、打つ手があるだけになんとも残念だ。高血圧や糖尿病には癌のように目に見えて広がり命を脅かすイメージがないせいだろうか。高血圧や糖尿病もやや確率は低くいものの実弾の入ったロシアンルーレットなのは違いはなく、平気で引き金に手をかける人が未だに多いのには苛立ちを感ずる。脳梗塞、心筋梗塞、人工透析などという病名に高血圧によるあるいは糖尿病によるを冠するようにすれば、いくらか違うだろうか。
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