駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

職人と統率者(リーダー)

2008年11月24日 | 小考
 職人を大量生産できない物を作る人あるいは大量供給できないことをする人と定義すれば、医師は職人に入ると思う。職人は微かにあるいは色濃く矜持を持つ、自分にしか出来ないという自負からか、能力を生かしているという使命感からか。職人の仕事は手で触れるような実体や実感を持ち、神が宿るという細部に関わる。不思議なことだが、職人は統率者(リーダー)にはならない、なれないと言った方が正確か。希に統率者になることがあるがすると職人ではなくなる。
 何か職人と統率者とでは相容れない資質が必要とされるらしい。統率者は一定の物を作ったり提供する人ではなく、状況に応じ判断し指示する人だ。統率者に必要なもの、それは何かと聞かれれば、いくつかの特質が上げられよう。人望とか信念とか決断力とか。確かにそれらは統率者(リーダー)に望まれる資質であるが、もっとも大事な能力は優れた大局観だろう。透徹した広い視野を持ち、進むべき方向と優先順位を違えないこと。優れた大局観こそリーダーに必須のものと思う。微妙なことだが優れた統率者は矜持よりも自信を備えている。
 権力の集中を恐れては組織を動かすことはできない。権力集中と民主主義は相容れないと思うのは錯覚。適当でない統率者を交代させることができる機構を内包するのが民主主義というものだろう。
 知ったようなことを偉そうに書いたが、毎日こつこつ一人一人の患者をみることしかできない職人医師としては、切実な感想である。
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