駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

生活習慣に挑む

2008年04月25日 | 診療
 誰が命名したか生活習慣病、適切にしてちょっと不具合な呼称である。生活習慣が関わる病気であることを周知させようという狙いは概ね達成された。問題は習慣の解釈で我田引水、牽強付会に、習慣ならいつでも変えられるから大した病気でないと変えようと試みない人から、変えようと努力しても習慣だから変えられないんだと強弁する人まで、習慣が都合よく使われてしまう。いっそ生活源病、生活起因病、生活歴病ではどうかと思うこともある。言葉遊びのように見えて、言葉が時に異様な力を持つ国(他国のことはよく知らない)なので、命名には細心の注意が必要だ。
 健康保険を使わない生活習慣病対策を考えた。同様のアイディアをお持ちの関係者は多いと思う。費用対効果も良いはず。教育レベルが高く付和雷同しやすい国民性を利用し、日野原先生あたりに現代養生訓をテレビで流していただき、数カ月ごとにメタボ芸能人を変身させる企画。もっとラディカルには政令指定都市に自家用車禁入区域を設けて歩かせる。一食600カロリーあるいは塩分2g以上の外食には100円、1000カロリあるいは塩分3g以上の場合は200円の嗜好税を掛ける。大人の国のやることではないかもしれないが、我が国ならまんざらでもないのではと思う。
 ところで生活習慣とは何だろう。字面からわかった気がするが、医学的には幼い時からの生活歴の中で徐々に形成された意識下の行動パターンとでもいえばよいのか。実はこれを変えさせることは非常に難しい。しばしば隣のおばさんやみのもんたの言葉に苦杯を喫する。自分に都合のよい、近しく感じられる人の言葉を重んじるのは人の常。今までもこれからも、いかにして患者の意識と行動を変えるかが、町医者最大の課題だ。
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健康料理の先達

2008年04月25日 | 人物、男
 丸元淑生さんが亡くなった。享年74歳食道癌、ご子息の報告を読み、その死を迎える姿勢に感服した。果たしてその食生活の効用はどうだったのだろうか。たった一人の実例でその食生活を判断するのは科学的ではないが、丸元さんの姿勢にはそうした評価を受けて立とうとする意気を感じていたので、少し触れたい。もとより、丸元さんに関する知識は数冊の著書を読み、そのレシペをいくつか試みた程度で、特に詳しいわけではない。
 寿命には生活環境と遺伝が関与している。食生活の関与の割合はどの程度か、専門家にも明確な答えは未だないようだが、概ね三分の一くらいのようだ。ただ注意しなければならないのは、足を引っ張る悪い要素(たとえば喫煙)があると、折角の注意や努力が報われないということ。
 丸元さんは多くの文献を読まれ、身体によい食生活を発言し実行された。いくつかお勧めのレシペを試みたが、B級グルメの私にはもう一つの味わいだったことと、どこか微かに文学者の屈折と僅かに科学と別種の思い入れを感じたことで、そのまま受け入れることはなく、実効はどんなものだろうかと、横目で見ていた。その徹底性と実行力に、もう少し恵まれるかと思っていたので訃報に虚を突かれた。大数での統計的な評価とは異なり、個体の評価は本来ご自身に帰するもので、一読者が何か申し上げることではないが、享年になにがしか感慨を禁じ得ない。
 医学界もかなり遅れたが、抗加齢学会などで健康で長く生きる生活方法を模索し始めた。先達の一人として、どう思われていただろうか。
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