渡辺美奈さんはヴィデオ上映に先駆けて、「この法廷が行われた事を知らない人は挙手を」の設問をし、粗全員の手が挙がったのを見た後、上映を始めた。
国際実行委員会主催の日本軍の性奴隷制を裁く民衆法廷「女性国際戦犯法廷」は2000年に東京で開かれた。その日世界の報道メディアが参加しこの事実を報道したが、日本のメディアは殆んどいなかったという。そういう理由から日本でこの出来事を知る人は少ないのも無理からぬ事であった。
アジアをはじめとする南洋諸島の被害女性達は、当時の悲痛な経験を自ら証言していた。証言の途中で余りの辛さに意識を失う人も出た。それ程に女性への性暴力は心身を傷つけ、後の人生にも重い後遺症を残していた。性暴力が正式に裁かれたのは今回が始めてであったという。
各国の裁判官が日本の「慰安婦問題」に出した判決は「日本の有罪」で、正式な謝罪と賠償責任、再発防止を求めた。つまり今も尚、世界中で行われている戦時下の女性への暴力を犯罪として規範化することが目的でもあった。民衆法廷は国際世論を喚起するために市民が行う裁判で、ベトナム戦争時米国を裁いた「ラッセル法廷」の先例もある。法的な拘束力は持たないが、その後のベトナム反戦運動に大きな影響を与えたという。今まで断片的に見聞きしていた知識が私の中で繋がり、ただ黙して見入るばかりだった。3は証言する女性達。4はモロッコの市場で。