昨年の12月にNHKテレビが「100分de名著」で「カラマーゾフの兄弟」を取り上げた。25分×4で100分になる。毎週月曜の夜10:25は寝ている時間帯である。事前に放映を察知して4回すべて録画することができた。私は米川正夫訳のそれを手元において読み返すことを日課のようにしていたので、このうえなく興味深い番組だった。旅から帰って録画を一時停止させながら見ている。
解説者はロシヤ文学者の亀山郁夫だ。米川訳と亀山訳を読みくらべるのも一興だろうがそんな時間はなさそうだ。最初に小説全体を通して四つの層が絡み合うダイナミックな構造になっているという提示がなされる。象徴層(思想の根幹を巡る問い)、歴史層(作者の歴史観)、物語層(プロット・筋)、自伝層(作者の人生との関わり)の四つだ。
放送の初回は「過剰なる家族」、2回は「神は存在するか」、3回は「魂の救いはあるのか」、最終回は「父殺しの深層」というタイトルだった。物語層で殺されるのはカラマーゾフ家の父フョードルだが、それぞれの層でもある「父」的な存在が殺害されるという。象徴層の議論ではイワンの無神論は神殺し、皇帝批判は歴史層における皇帝殺しという説だ。
今回の番組では映画の一場面の映像なども取り入れられていた。この先はこの番組に私が深く共感したことや、新鮮に感じたことなどをいくつか書きとめておきたい。長男ドミートリー(28)は通称ミーチャ、次男イワン(24)、三男アレクセイ(20)は通称アリョーシャだ。●イワンを愛称で呼ばないのは作者が距離感を保ちたいからである。(続く)
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