ドストエフスキーには①18歳のときの父の死②28歳のとき反逆罪で死刑宣告を受け、直前に恩赦そして4年間のシベリア流刑という二つのトラウマがある。父の死は農奴による殺害説が濃厚で、その知らせを聞いて激しい癲癇の発作が起きる。●発作はショックでなく解放感からと解説者(亀山)は考えるという。皇帝権力の干渉は生涯続き、妥協しなければ作家活動は不可能だった。
去勢派とはロシア正教会から独立した異端派の一つで、教会と性を否定し自らの性的器官を除去した。去勢派の過激さはロシア皇帝への批判的な視線に繋がる。カラマーゾフ家の料理人で影の主役スメルジャコフと去勢派との関わりが暗示されている。●カラマーゾフという言葉にこめられたのは「生命の全体性」で、スメルジャコフは「カラマーゾフ」的なものと対立する存在。
イワンは幼児虐待の例を挙げながらキリスト教の矛盾を「大審問官」という物語詩にしてアリョーシャに語る。物語の中でイワンと大審問官は同一視されている。二つのキスの場面がある。●キリストから大審問官へのキスはキリストの敗北宣言で、アリョーシャからイワンへのキスは、イワンの中に残っている信仰のかけらを感じ取りイワンの可能性にかけてキスをしたと解釈すべき。(初詣)
ゾシマ長老の一代記がある。①傲慢なゾシマの兄マルケールが病を得て穏やかな心を得た話②ゾシマが決闘を思いとどまる話がある。●ドストエフスキーには「傲慢の克服」というテーマがあった。社会の底辺にある二等大尉スネギリョフとその子の関係はカラマーゾフ家の父子の関係と全く逆である。●誇り高い人間が傷つくという姿の描写が素晴らしい。(続く)
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