ドイツ文学などこれまで読んだこともなかったが、ある本を読んでいてニーチェの「ツァラトゥストラ」とはどんなものか知りたくなった。そこで手にしたのは中央公論社の世界の名著シリーズにある手塚富雄訳(1966年)の「ツァラトゥストラ」だった。私が興味深く読んだのは、本文に先立って訳者がニーチェの人生を紹介し解説した部分だった。本文の方は第一部のみ読んでそれより先に進むことなく終わった。
別刷りに、訳者と三島由紀夫との対談がある。「素質的にわれわれは終末観とか、最後の審判などの直線的な時間観念には親しみにくい。ニーチェの永劫回帰の思想には、瞬間を永遠にしようという決意がありますね。東洋の考え方とほとんど同じところにいくんですけど、東洋ではああいうふうには言わないですね(手塚)」
ああいうふうとは「人生は、そのあるがままの姿において、意味も無く目標も無く無への終曲も無く、しかも無可避的に回帰する。すなわち意味無きものの永遠」というニーチェの言葉だと思われる。「なんかそこまで言っちゃっちゃ、おしまいみたいな気がして・・・。ニーチェがキリスト教に反対しただけじゃなくて、プラトニズムまでひっくるめて否定しちゃったということは爽快ですね。やはり西洋というものは、そういうふうにニーチェ的に要約されてよくわかるような気がします(三島)」
ニヒリズムとは「虚無主義」と訳される。その代表がニーチェであると言われている。ニーチェが説いたのは「無意味な人生を既成の価値観にとらわれることなく創造的に生きる人生にこそ人生の意味がある」ということで、言うなれば積極的ニヒリズムということのようだ。また同じく負のイメージをもたれているアナーキズムは「無政府主義」と訳されるが「権威からの自由を目指す生き方」と解釈することができる。
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