福島の会津若松市と新潟の魚沼市を結ぶ「JR只見線」が、この10月1日に2011年7月の豪雨災害から11年ぶりに全線開通した。「秘境路線」として鉄道ファンには人気の路線で、私も「青春18きっぷ」で乗車したことがある。JR東日本は当初、廃線とバス転換を福島県側に提案していたという。
それを翻意させたのが、復旧費用90億円の3分の1を、復旧以後の維持管理費年3億円を負担してでも全線再開にこだわる地元の熱意だった。JR東は列車運行を担い、鉄道施設は県が維持管理するという「上下分離方式」が採用された。「自分たちの鉄道」として責任をもつという運営のあり方は画期的なことで注目に値する。(茶の木の花)
JRでは今年、東日本 、西日本、東海の三社でもローカル線の赤字額の公表に踏み切った。国交省が主導して路線ごとの存廃論議が本格化する。しかし廃線を警戒する沿線自治体の反発で協議が進まないケースが多い。たとえば2020年7月の豪雨で運休したままの「JR肥薩線」についてはJR九州は赤字額を235億円と見積もり廃線の方向だが、地元は「SL人吉」などの観光列車が人気だったことから、鉄道としての復旧を求めている。
JR東日本・深沢社長の10月9日のインタビュー記事を読んだ。利用が少ないローカル線をバスなどに転換した場合、同社が運行経費などを負担する期間について「30年以上は責任を持てない。30年は一つの区切りだ」と語った。「昔は鉄道しかやっていなかったが今はやれることの幅が広がった。生活サービスやDX(デジタル化)などの分野で貢献できる。働く場所をつくり、新しい人が入ってこないとまちは絶対に成り立たない。それが我々の仕事だと思っている」と話した。