春のジンチョウゲ、夏のクチナシ、秋のキンモクセイは三大香木と呼ばれている。猛暑が続いたあとに、やっと爽やかな秋の季節がやって来た。街中に金木犀の甘い香りが漂っている。三大香木もいいけれど、実は玉川上水に自生する初夏のスイカズラの甘く優しい香りが私の一番のお気に入りである。
それはさておき、かつて我が家の南の生垣沿いに背丈以上に育った金木犀があった。しかし畑の陽当たりの関係が原因であったと記憶しているが、それを無残にも切り倒してしまった。近所の方からなんともったいないことをとお叱りを受けたことがある。
五年以上前のことだが、薬用植物園で一本の金木犀の苗木を手に入れた。ニシキギが枯れて姿を消した窓下の空間に植えた。こんな菜箸ほどのひょろひょろが、ほんとうに育ってくれるのかと不安だった。それが無事に育ち始め、その成長の過程を観察した。
そしてつい最近のことである。初めて窓下の金木犀の枝先にオレンジの小さな花が咲いているのに気づいた。驚き、そして感激した。近づいて香りを確認する。かすかに香っている。見守る金木犀がやっと一人前に成長を遂げたことの喜びは大きい。