韓国では過去の強権・暴力的な軍事独裁での過ちについて、事実を究明したうえで再審裁判によって多数の誤判を正し、被害当事者や(処刑された人、獄死、病死した人たちの)遺族に対し謝罪と名誉回復、そして刑事・民事上の償いを行う立法処置が執られてきた。
主な真相究明・名誉回復措置としては1980年の「光州事件」、犠牲者が2万5千人以上とされる1948年の朝鮮戦争前後の「済州4・3事件」である。また「在日良心囚」たちの再審の基礎を準備する役割を果たしたのが、2005年の「真実和解のための過去事整理基本法」だ。
在日良心囚たちは本人の意思に反して不可抗力で収監され、裁判・受刑・服役後に日本に戻ったため永住資格を失った。法務省はいったん資格を失ったら原状回復は難しい、法改正が必要だという見解だ。日韓議員連盟が議員立法で元良心囚を救済する方向だったが日韓関係悪化などの情勢の変化で宙に浮いたまま忘れられた形になっている。
この連載記事で最も心に残ったのは、元良心囚の康宗憲さんのつぎの指摘だ。「救援運動をしてくれた日本の仲間たちに感謝の気持ちと強い友情を感じますが、日本の社会がなぜ司法の改革をできないのか常に私の問題意識としてありました。戦前戦中のファシズムの中で日本社会でこれだけの犠牲と苦痛があったのに、それを敗戦後一切チャラにして誰も触れようとしないというのは日本にとって非常に好ましくない処理の仕方でしょう」