70歳になる囲碁棋士の小林光一名誉名人は、人間の棋力を上回る囲碁AIの出現で碁の勉強が様変わりしたと言う。「これまでとは違う碁を見せられている気がするんですよね。こっちの価値観が通用しない。でもよくよく見ると、相当な手なんですよ。そういう世界を見せられて、おもしろいですよ。棋士なら見たいから。勉強することが一気に増えた」(玉川上水の柵いろいろ)
日曜放送のNHK杯囲碁トーナメントでは「一手ごと変化する勝率と、3通りの着点」をAIが予想するようになった。勝率は%で、着点は「白13の五」のように碁盤の座標で表示される。その影響で座標にも関心をもつようになった。しかしAIは膨大な量のパターンを覚えているだけで、意味は理解していない。だからなぜ最善手なのかその理由を教えてくれることはない。
AIは囲碁や将棋だけでなく、俳句、短歌はもとより散文や詩などの創作の分野でも研究が進んでいるようだ。日経が主催する「星新一賞」は、AIを創作に用いて応募することを認めている。北大教授、川村秀憲さんの開発チームが「AI一茶くん」を生み出したのは2017年。小林一茶や正岡子規の句や、現代俳句を合わせた約10万句を学習し一秒間に約40句を生成するという。
俳人は「AIがつくった俳句から、勝手に人格が立ち上がるときもある。読み手が自身の属性、経験から勝手に言葉を理解してしまう。人が読むことによってAI の俳句に意味が生れていくということはあると思います」歌人は「一番言いたい部分は読者に引き出してもらうのが歌の読みだと思っている。AIがつくった作品だと知らずに感激した後、作者がAIだとわかったら、僕は失望すると思う。だけど最初の感激はうそだったのかと言われると、うそじゃない」