玉川上水の辺りでハナミズキと共に

春は花 夏ほととぎす 秋は月 冬雪さえてすずしかりけり (道元)

*帰郷

2014年08月17日 | 捨て猫の独り言

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 振り返ると退職後は少なくとも年に一度は帰郷している。今年は8月の7日に鹿児島に向い、13日に東京に帰った。行き帰りともシルバー割引(65歳以上)の航空券だった。これは予約は不可で、当日の空席待ちの券である。お盆帰省の人々の大移動の間隙を縫うようにして旅の日取りを決めたから、私は当初の予定通りの便に搭乗することができた。繁忙期ということで割高の16、790円だったが、そのうち繁忙期でなくてもこの高い価格が定着してしまうかもしれない。あるいは70歳以上という条件の変更もあり得る。

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 旅は計画段階の時が一番心がはずむのかもしれない。最終目的地の鹿児島市に、いつもとは異なる方法でアプローチすることを考えた。空港からバスで25分ほどの天降(あもり)川沿いにある温泉でゆっくり過ごした後で鹿児島市に入ろうと考えた。空港から隼人駅行きのバスは肥薩線の嘉例川駅を経由し、天降川に出る。左折して上流に向かうと塩浸、丸尾の温泉だが、右折して下流に向うと、安楽、妙見、日当山の温泉だ。妙見温泉で下車して、湯治の宿である妙見館に2泊した。ここは九年前に両親と自炊しながら泊った思い出の宿だ。

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 古い建物だから薄暗い廊下にはどんよりとした空気が漂っている。湯治客が残した猫が住みつき、いつのまにか七匹になったという。80歳の女将さんは「自慢できるのはお湯だけですよ」と謙虚だ。台風の影響で二日目は雨となり外出はできず、何度も湯に入る。客はほとんどなく自炊の老婆を一人見かけた。私は二食付きで、食事は川向かいの妙見ホテルから届く。無尽蔵に湧き出るお湯が惜し気もなく天降川に放出されている。台風は鹿児島県の東を北上し甲子園高校野球の開幕が二日も延期になった。幸いなことに台風による私の旅程の変更はなかった。

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 帰郷の目的の一つは90歳になる母が昨年入居した老人ホームを訪ねることだ。そのホームは桜島を見渡せて、霧島連山を遠望できる鹿児島市内の高台にあった。さらに今回の帰郷では念願だった甑島訪問が実現した。この島はかつて県庁に勤めていた弟の赴任地の一つである。甑島は薩摩半島から西へ30キロに上、中、下と縦に3島が連なる。今回見学したのは上甑島だけだ。串木野を出たフェリーが最初に寄港するのが上甑島の里港である。その里町の知人宅に一泊した。里町は島と島をつなぐトンボロ(陸繋砂州)の上にできた集落だ。池と海を隔てる4キロの砂州の「長目の浜」もめずらしい地形だ。下甑島の西海岸クルーズでは海から空に向ってそそり立つ断崖が見られる。それは太古の空気を感じさせる圧倒的な迫力だという。

コメント (3)
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