「まどみちお」という詩人の名を私が認識したのはごく最近のことだった。NHKラジオ第2にカルチャーラジオという番組がある。「ポケット詩集を読む」という童話屋編集長の田中和雄の5回にわたる講演の中に「まどみちお」が登場した。そのとき紹介していた詩は「おならはえらい でてきたとき きちんとあいさつする ・・・・せかいじゅうの どこのだれにでも わかることばで・・ えらい まったくえらい」というものだった。
童謡の「ぞうさん」の作者も「まどみちお」である。作者の解釈を知って私はしばらく考えさせられた。「ぞうの子は鼻が長いねと悪口を言われた時に、しょげたり腹を立てたりする代わりに一番好きな母さんも長いのよと誇りをもって答えた。私が思いをこめたのは、目の色が違うから肌の色が違うからすばらしい。違うから仲良くしようねということです」
「まどみちお」さんは1909年のお生まれだから今年で104歳である。地球上のあらゆる存在に敬意をはらってきた詩人である。そんなまどさんの詩を皇后美智子さんが選び英訳したものが1990年代に出版されていたことを私は知らなかった。今年になって新たにまどさんの詩を美智子さんが選び英訳した詩集が2冊同時刊行された。私はそれらを偶然にも図書館の新刊コーナーで見つけて手に取った。それは「にじ」と「けしゴム」という表題の2冊の詩集である。
私は孫に「eraser」という単語を教わったばかりだった。表題になった「けしゴム」という詩はあっけないほど短い。「じぶんで じぶんを けしたのか いまさっきまで あったのに」美智子さんの英訳はつぎの通りだ。「Have I erased Myself Funny,I was here Only a minute ago」もう一つの「にじ」という詩は「にじ にじ にじ ママ あの ちょうど したに すわって あかちゃんに おっぱいあげて」である。