玉川上水の辺りでハナミズキと共に

春は花 夏ほととぎす 秋は月 冬雪さえてすずしかりけり (道元)

*一日に一回上映中

2012年10月22日 | 捨て猫の独り言

 これまで私は熱心な映画ファンではなかった。今後のことはともかく、迷ってばかりいた若い時のあり余る時間の中でもっと映画館に通っておけばよかったと後悔することがある。「後悔先に立たず」である。この時の「先」は過去のことで、「先が見える」の「先」は未来のことである。日本語は難しい。つまり「先」とは「自分から遠いところ」である。過去にも未来にも使える。話をもとへ戻そう。

 監督が降旗康男で主演が高倉健の映画「あなたへ」を観てきた。立川駅まで自転車で片道30分である。8月25日に公開されて2ヶ月が経ち立川駅での上映が終了するかもしれない。現在は一日に午前中一回の上映になっていて、平日のこの日の観客数は20名余りだった。9月15日に公開された滝田洋二郎監督の「天地明察」をすでに観ている。

 私は遠い昔に健さんが鶴田浩二と共演した任侠映画を見たぐらいだ。実直で謙虚で耐える男のイメージがある。主役の健さんは「高倉健」であることが仕事であるような映画だ。なんというか健さんのための映画と言えばよいだろうか。モントリオール映画祭では特別賞に終った。それは無理からぬことで、とくに外国人にはストーリーをよく理解できない場面がこの映画には多々あるように思う。映画祭でのスタンディングオベーションは健さんが81歳だなんて信じられませんという思いのものだったのではないか。

 回想シーンの中で童謡歌手であった亡き妻が歌う場面が何回かある。その歌は強烈な印象を残す。その歌とは宮沢賢治が作詞・作曲した「星めぐりの歌」である。「あかいめだまのさそり ひろげた鷲のつばさ あおいめだまの小いぬ ひかりのへびのとぐろ・・・」トントトントトントトントというリズムである。ライアー(竪琴)を使い弾き語りをする歌手で作曲家の木村弓さんの歌が持つ透明感に近いものを賢治の歌にも感じた。今日の夕刊によると周防正行監督による映画「終(つい)の信託」が27日から公開になるという。また映画館に出かけるとしよう。

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