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時代を読む『GDP増大が経済発展か』 by 内山節

2011年01月30日 | 社会(歴史・都市計画含む)

本日の東京新聞に載った立教大学大学院教授で哲学者の内山節氏のコラムから:

時代を読む『GDP増大が経済発展か』

最近、比較的若い人たちの間で、ソーシャルビジネスへの関心が高まっている。実際、そういう企業をつくる人たちも、ずいぶん多くなってきた。ソーシャルビジネスとは、自分たちが大事にしたい社会的使命の実現を主目的にした、経済活動のことである。

私の友人に、盛岡市で農産物店を経営している人がいる。彼は元々は商社マンだった。その後、農家のためになる仕事がしたくなって、20年近く前にこの店を開いた。

朝早くから協力関係のある農家をまわり、作物を集め話し合いをしながら、農民たちの活動を支えていく。

店の目的は安全かつ安心でおいしい食べ物をつくっている農民が、持続的に農業を営んでいける基盤を提供することで、地域の消費者とともに地域農業を守っていくことである。だから利益が目的ではない。しかしこの使命を継続的にはたしていくためには、店の運営費や従業員の人件費なども確保されなければならないから、そのためのビジネスモデルは持っていなければならない。これもソーシャルビジネスの一つの形である。

今日フェアトレードといわれているものもそのひとつの形態で、途上国の人々がつくりだしたものを買いたたくのではなく、その地域の人たちが無事で持続的な生き方、働き方をつくりだせるように、一定以上の価格で購入するとともに、その地域の人々がもっている技術をいかして、先進国の人たちが求めているものをつくってもらう提案をする。このような流通、販売のあり方を、この活動を支持してくれている消費者とともにつくりだしていく、それがフェアトレードといわれる経済活動である。

ソーシャルビジネスには他にもさまざまな形態があるが、それはこの活動を支持してくれている人々とともに社会的使命を実現していこうとする、ひとつのビジネスのかたちなのである。

経済発展はイノベーションによっておこる、という理論を提唱したのは、60年ほど前になくなった経済学者のシュンペーターであった。

イノベーションとは、新しい技術の開発や生産方法の改革、新たな資源開発によってもたらされる経済的変革のことなのだが、この理論を応用すれば、ソーシャルビジネスもイノベーションのひとつだと言ってもいいだろう。

ただしその目的は経済発展にあるわけではないし、利益の増大にあるわけでもない。

人間達が経済の歯車にされてしまうのではなく、無事で幸せな社会をつくる。さらには自然とも調和しながら、持続できる社会をつくっていく。そのための改革運動が、今日ではソーシャルビジネスという名の下に展開している。

そしてこのような動きに関心を示す人がふえているのは、これまでのような経済発展をめざしつづければ、自然も人間の社会もますます壊れて言ってしまう、と感じる人々が増加している、ということだろう。

私たちはそろそろ、経済発展とかイノベーションという言葉の意味を、再検討しても良い時期にきているのである。GDP(国内総生産)を増大させることが経済発展なのか。それとも自然や人間が無事で、幸せな社会をつくるための経済を創造していくことが、本物の経済発展なのか。イノベーションは新たな利益創出のためにあるのか。それとも持続的な社会をつくるための方法なのか。

内山氏のコラムを読んで共感する人は、私も含めて多いと思います。

そうであっても、「それは理想に過ぎず、実際、政府も企業も方向を変えていこうとは思わないだろうし、ソーシャルビジネス活動家がいくら頑張ってもあまり効果はない。そもそも世界全体が変わらないと。」と悲観する人は、そのうち半分以上はいるのではないでしょうか。

現在、2、3歩外を歩くだけで足が折れる鶏のナゲットや、農薬や保存料のたくさん降りかかった遺伝子組み換えの安い作物(もしくは加工品)を、「安ければ良い」と喜んで食べているだけの人達は多いと思います。

それがめぐりめぐって安全な食べ物を供給しようとしている農家を潰したり、アフリカの農地を使い捨てにしていること、ひいては『安全な食べ物を特別なもの』に、自分たちが変えてしまっていることに気がつきません。

上記以外、何においても、一人ひとりが「政治家でなくても、ソーシャルビジネスをしなくても、消費者である自分たちが変わっていけば、社会を変えていける」と信じることから、『本物の経済発展』も『絵に描いた餅』ではなくなるでしょう。

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