新・徒然煙草の咄嗟日記

つれづれなるまゝに日くらしPCにむかひて心に移りゆくよしなし事をそこはかとなく紫煙に託せばあやしうこそものぐるほしけれ

野口哲哉展を楽しんでいるうちに梅雨が明けた

2021-07-17 20:32:13 | 美術館・博物館・アート

きのう、館林までプチ・ドライブをしてきました。
往路が67.1kmを1時間15分で、復路が64.1kmを1時間20分でしたから、かつてのクルマ通勤より距離がほんのちょいと長く、所要時間は結構短いという、元・日常茶飯事ドライブでした。

で、館林まででかけた目的はといいますと、

群馬県立館林美術館で開催中の「野口哲哉展 this is not a samurai」を観るためでした。

野口哲哉さんの作品には、2014年3月に、NHK日曜美術館アートシーンを視て興味を持って訪れた「野口哲哉展―野口哲哉の武者分類図鑑―」@練馬区立美術館でハマり(記事)

次いで、2017年12月に南青山のギャラリー玉英で開催された「野口哲哉作品展 armored neighbors ~鎧を着た隣人~」を観に行き(記事)、さらに、

2018年7月には、まったく私には似つかわしくない 銀座のPOLA MUSEUM ANNEX「野口哲哉 ~中世より愛をこめて~ FROM MEDIEVAL WITH LOVE」を観に行きました。

これで野口哲哉さんの個展を拝見するのは4回目ですし、過去の図録2冊持っているくらいですから(今回も買ってしまった)お馴染みの作品がほとんどでしたが、やはりでの鑑賞は格別です。

なにしろ、野口哲哉さんの作品(フィギュアと呼ぶにはおこがましい…)は、高さ86cmの座像から、7.3cmの全身像まで、大きさが様々です。
この辺りは、図録を見るだけではどうしようもカバーできませぬ

   

さて、今回の展覧会のサブタイトルは「this is not a samurai」

サムライではない? みんな甲冑姿なのに?

野口哲哉さん本人のテキストを転記しましょ。

よく考えたら、これまでサムライという単語を一度も使いませんでした。
時代や民族、宗教、文化や職業を超えて、すべてに共通する要素があるとするならば、それは人間という事実だけなのかもしれません。
そしてできることなら、それは輝ける真実であって欲しいと思います。
オシャレな帽子も、砂漠のターバンも、宇宙飛行士のヘルメットも、過去のチョンマゲだって、すべて人間の頭の上にのっているのですから。
だから僕はいつの頃からか、……いえ本音を言うと、作品を作り始めて以来ずっと思ってきました。
THIS IS NOT A SAMURAI -これは侍じゃないんだ-」
美しさや悲しさ、怒り、そして充実感。人間としてのリアルな日常が、僕たちに複雑で奥深い感情をもたらしてくれます
だから、僕の作る人々にサムライなんてバイアスは必要ありません。
見つめていたいのは人間です。

鎧の中で儚く輝く、人間の姿なんだ。

この展覧会の出品作の中で、一番響いたのは、「Small sweet passion~南北朝の花」でした。

老武士が、枯れゆく花の小枝を持って、それをジッと見つめています。

「ホントは戦なんかに来たくはなかったんだけどな…。ま、仕方ない。これも運命だ」とでも心の中でつぶやいていそうです。

もう一作品、「Un samouraî vient」

こちらは、ブリーフケースを手に、眩しそうに空を見上げています。
もう定年の近いサラリーマンが、あまりやる気無く営業活動に出かけるところみたいに見えます

今回の展覧会の図録を読んで知ったことがありました。
それは、彼の代表作の一つであろう、「シャネル侍着甲座像」の由来です。

図録によれば、

一連のシャネルシリーズは、2007年に東京・銀座のシャネル・ネクサス・ホールで開催された若手アーティストグループ「団・DANS」の展示のために制作しました。

だそうです。

でたぁ~、シャネル・ネクサス・ホール

上の方に「まったく私には似つかわしくない 銀座のPOLA MUSEUM ANNEX」と書きましたが、POLA MUSEUM ANNEX以上に、入るのに気が引けた場所が、このシャネル・ネクサス・ホールでした。

写真展「DEPARDON/TOKYO 1964-2016」を観に行ったのですが(記事)、シャネルの店に入るのもドキドキで(ドレスコードに反するとかで追い出されるかも…とか)、エレベーターに乗ってもドキドキで、

なんとも居心地の悪かった記憶があります

ま、それは今回の展覧会とは関係はありませんので、話を戻しまして、写真撮影可だった「第5章 THIS IS NOT SAMURAI~鎧を纏うひとびと~」で撮った写真を何枚か載せておきましょう。(既出の「Un samouraî vient」もこのとき撮ったもの)

まずは、「野口哲哉 ~中世より愛をこめて~ FROM MEDIEVAL WITH LOVE」でメインビジュアルに使われた「Clumsy heart」

今回は、この武士を後方からしか拝見できませんでしたので、3年前に撮った写真も併せて載せましょう。

壁につけた左手とか、背伸びしたことで口が開いてしまっているところがcute であります。

お次は、その名も「cheap wings」

野口さんの解説によれば、

個体識別のため侍が戦場で背負った様々な形状の指物は、軽量化のためにほぼすべてが紙で作られていました。武装した男の背中に生えた紙の翼は、チープで脆く、しかしとても軽快です。

でもこの紙目だと、ちょいと走ったり風が吹くと、すぐに羽が折れてしまいそう
やはりを塗って固めるべきではなかろうか

兜の前立も、紙や板に漆を塗って鉄のように見せていたそうですが、確かに重い前立をつけてしまうと、「ビッグホーン」のようにうたた寝すると、すぐに寝違えそうです。

次は「POCKET」

こんな感じの悪い上司って、どこにでもいそうですな。

ここまで、なんとなくカッコ良くない武士ばかり載せた気がしますが、「TRANSMISSION~ジャーマン・スペシャル~」はかなりの男前

スタイルはいいし、服装のセンスもいい。こんな武士がいたらモテるだろうな…

一方、こちら

「ONE'S SOME LIE」の人は、なぜ裸足なんだろう? なぜ太刀に「ONE'S SOME LIE」と書かれた尻鞘をかぶせているんだろ? どういうシチュエーションなんだろ? と、いろいろ疑問が涌いてきます。

それにしても、野口さんの造り出す人物は、リアリティあり過ぎで、実際にこのサイズの人がいて、今にも動き出しそうです。

展示の最後に、仕掛かり品 or 失敗作がありました。

人物本体はレジンで成形し(上の展示を見て映画「エイリアン」を思い出した)、甲冑は本来の作り方にそってパーツを組み上げて人物に着せるのだそうな

加えてデッサンも。

あ~~ 楽しかった 

本気で野口さんの作品の現物が欲しくなってきた

そうだ、そうだ
展示室1コレクション展示にも野口さんの作品「フランソワ・ポンポン像」(欲し~~~)がありますので、お出かけの際にはお忘れなく

こうして「野口哲哉展 this is not a samurai」堪能したあと、庭のベンチに座って、心が掃除されるような美しい群馬県立館林美術館の佇まいを眺めました。

それにしても立派な美術館
これが、前橋でもなく、高崎でもなく、館林にあるというところがナカナカやるじゃありませんか、群馬県

このあと、別館も観覧したのですが、そのお話は、気が向けばそのうちに…

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