新・徒然煙草の咄嗟日記

つれづれなるまゝに日くらしPCにむかひて心に移りゆくよしなし事をそこはかとなく紫煙に託せばあやしうこそものぐるほしけれ

水彩画っていいな、と思ったワイエス展

2010-11-15 06:23:56 | 美術館・博物館・アート

101115_1_0 ちょっと予定を変更して、きのう観てきた「アンドリュー・ワイエス展 オルソン・ハウスの物語」のことを書きます。あまりにも予想外に良かったもので・・・。

アンドリュー・ワイエスは、昨年、91歳で亡くなった「アメリカの国民的画家」です。
私は、あまりワイエスの作品を観たことがなく、彼の名前を聞いて思い浮かべられる作品は、おなじみ「クリスティーナの世界」とか「ヘルガ・シリーズ」くらいのもの。
しかも、「クリスティーナの世界」は、「座右の画集」であるところの、

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で、細密画のように書き込まれたテンペラ画を印刷物として観ただけですし、

101115_1_2

ヘルガ・シリーズ」に至っては、展覧会のポスターや画集の表紙で観たイメージしかありません。

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そんなわけで、さほど興味のわく展覧会ではなかったのですが、埼玉県立近代美術館(MOMAS)の企画展なら、無料で観られるし、、、と、北浦和まで出かけてきた次第です。

   

101115_1_1

この「アンドリュー・ワイエス展 オルソン・ハウスの物語」は、ワイエスの「夏の家」があったメイン州クッシングで、近所の「オルソン・ハウス」をモチーフに30年間描き続けてきた「オルソン・シリーズ」のうち、朝霞市にある「丸沼芸術の森」が所蔵する水彩・素描画約200点を一挙公開するというもの。

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丸沼芸術の森といえば、2006年2~3月にMOMASで開催された「ベン・シャーン展」も、丸沼芸術の森の収蔵品で構成されていましたっけ・・・。

なんと素晴らしい(私好みの)コレクションを持っていらっしゃるのでしょうか 今度、丸沼芸術の森にも行ってみなければと思っています。

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さて、展覧会の最初に展示されていた水彩画「オルソンの家」(1939年)から、私のワイエスについての印象がガラリと変わりました。「ひたすら緻密、ひたすら写実の画家」だと思い込んでいた私の不明を恥じるしかありませんでした。

展示されていたのは、ひたすらオルソン・ハウスひたすらオルソン姉弟、夏なのに冬を思わせるような鉛色の空勤勉に働き、質素に暮らし、強く生きる人々・・・。
ワイエスが「国民的画家」と慕われている理由がわかる気がしました。
おそらく、つかの間の繁栄から距離を置いたアメリカの原点というか、20世紀版「大草原の小さな家」のような存在なのではなかろうかと思います(オルソン・ハウスは「入江近くの大きな家」ですが…)。

今回の展覧会では、ほとんどすべてが水彩画か素描で、テンペラ画は「オルソン家の終焉」の習作1点だけでした。これだけ水彩画をまとめて観たのは、私にとって初めてだったかもしれません。

101115_1_3 いやぁ~、水彩画って、いい
特に、現物を間近に観ると、画用紙の質感がいい

もらって帰れるとすれば、右の「馬の尻」(なんと直接的なタイトルか)かな?

う~ん、下の「オルソンの家」もいいなぁ

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あまりにも展覧会が良かったので図録を買いましたが、アート紙を使っているせいか、現物とだいぶイメージが違っていて、残念でした

   

ところで、ワイエスの代表作「クリスティーナの世界」はオルソン・シリーズの一点なのですが、今回、お出ましになりませんでした(MOMAの収蔵品)。
代わりに、習作が何枚も何枚も展示されていました。
モデルとなったクリスティーナ・オルソンの様々なポーズとか、彼女の手の形の様々なバージョンとか、遠景として描かれたオルソン・ハウスの細密なスケッチとか…。
そんな習作の中で、最終版のイメージが強く現れている作品がこちら。

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両手の位置は、最終版とかなり違いますなぁ。

この「クリスティーナの世界」に限らず、他の作品も、その習作がたぁ~っぷりと展示されていましたが、退屈さをまったく感じないのはどうしたことでしょうか?
江戸東京博物館で特別展「隅田川 江戸が愛した風景」(昨日が千秋楽)を観た時には、ひたすら隅田川をモチーフにした作品が並んでいることに単調さを感じてしまった(記事はこちら)というのに…。

きっと、まるで工業製品の商品化の過程のような、実験と試作の繰り返しに共感してしまったのでしょう。そして、「私はこれを描きたいんだ 最高の作品にしたいんだ」というワイエスのパッションが響いてきたのでしょう。

   

ふと、私のビデオコレクションに、約2年前にNHK の新・日曜美術館ワイエスを取り上げた「はかなさに秘められた情念 ワイエスのアメリカ」があったことを思い出して、さっそく鑑賞しました。そして、「ここまで書いた私の感想って、そんなに間違ってはいないようだ」と思ったのでありました。

最後に、ワイエスの「夏のモチーフ」となったオルソン・ハウス、上に載せたGoogleの画像でもお判りのとおり、ワイエスが描いた頃のまま(納屋はなくなっていますが…)現存しています。

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上の画像(図録からスキャン)をクリックすると、別のサイトの詳細映像がご覧いただけます。

オルソン・シリーズの舞台となったメイン州に行ってみたい…。

メイン州といえば、スティーヴン・キングの多くの作品の舞台になったところですし、私が大々好きなジョン・アーヴィングの「サイダー・ハウス・ルール」(本は絶版)の舞台でもありますし。

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この「アンドリュー・ワイエス展 オルソン・ハウスの物語」(12月12日まで)は、お薦めデス

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