三日坊主日記

本を読んだり、映画を見たり、宗教を考えたり、死刑や厳罰化を危惧したり。

終末を待望する人たち

2023年11月11日 | キリスト教

ダーレン・アロノフスキー『ザ・ホエール』に、引きこもっている主人公のアパートに、キリスト教の一派であるニューライフの宣教師が訪れる場面があります。
終末がもうじき訪れ、自分たちは天国に行くが、信仰しない人は地獄に堕ちるので、一人でも多くの人を救おうとして訪問したわけです。

ニューライフの教義がどのようなものかわかりませんが、『ザ・ホエール』で語られる終末思想はキリスト教福音派やエホバの証人などと同じように思います。

イエスが再臨(キリストが再びこの世に現れる)して、携挙(信徒を空中に引き上げる)があり、艱難(患難とも。天変地異や疫病の流行、戦争、飢饉など)が起こる。(この順序には諸説あり)

A・R・ホックッシールド『壁の向こうの住人たち』はルイジアナ州でティーパーティーの支持者たちにインタビューした本です。
2010年の調査によると、アメリカ国民の41%が2050年までにキリストの再臨が「おそらく」、あるいは「必ず」起こると信じている。
アメリカでは5000万人が携挙を信じている。(アメリカの人口は約3億3千万人)

A・R・ホックッシールドがインタビューしたハロルド・アレノはこう語ります。

もし魂の救いが得られれば、天国へ行ける。天国は永遠だ。そこへ行けばもう、環境のことを悩まなくなる。それがいちばんたいせつなことだ。

工場の廃液によって自分や家族、親戚がガンになったのに、環境破壊や公害問題は信仰に比べると大したことではないと考えているのです。

アレノ夫妻と息子ダーウィンは携挙を信じています。
終末のときに大地が焼かれ、千年後に地球は浄化される。
それまではサタンが暴れまわる。

ダーウィン・アレノはこう語ります。

神がご自分の手で修復なさるまでは、神が最初に創造なさったとおりのバイユー(アレン家が住む場所)を見ることはできないでしょう。でもその日はもうすぐやってきます。だから人がどんなに破壊しようとかまわないんですよ。

終末を信じる人たちにとって、環境破壊、戦争、災害、伝染病などは終末のしるしであり、喜ばしいことだと思っているようです。

グレース・ハルセル『核戦争を待望する人びと 聖書根本主義派潜入記』には、アメリカにはイエスの再臨と世界の終末を信じる人が大勢いて、かなりの影響力を持っていることが述べられています。

善であるアメリカとサタンに率いられた軍隊が核兵器を駆使するハルマゲドンは避けられない。
しかし、このことは歓迎すべきことである。
なぜなら、キリストが再臨すれば自分たちは天上に引き上げられる(携挙)からである。
彼らにとって地球はかけがえのない惑星ではない。
資源が枯渇しようと、環境を破壊しようと、もうすぐ終末なのだから。

『核戦争を待望する人びと』の原著は1986年の出版です。
サタンであるソ連はすでに崩壊していますが、終末を信じる人たちの考えは揺らいでいないようです。

新型コロナウイルスの流行、ロシアのウクライナ侵攻などが起きると、イエスの再臨が近いと喜ぶ人がいるのです。
そういう教えは現実を軽んじているように思います。

統一教会も終末の前の患難を説いています。(すでに文鮮明が救世主として再臨している)
https://familyforum.jp/2023062448410

藤田庄市「宗教2世(カルト2世)、その苦闘の歩み」(井上嘉浩さんと共にカルト被害のない社会を願う会「Compassion」)に、エホバの証人の信者だった女性が息子から次の質問をされ、答えることができなかったと書かれています。

・予言がはずれたこと
エホバの証人では、この世の終末がいつ来るかが、何度も予言している。
しかし、終末の予言はいつもはずれ、いまだに終末が来ない。
予言がはずれたのではなく、調整されたとする。
ハルマゲドンが近いということは教義の中心である。

それは調整ではなく,変更でしょう。


・エホバの証人は自分たちだけが唯一の神を知っていると主張する
信者はエホバの証人の出版物以外の書籍は読んでいない。

神は存在するかもしれないけど、他のキリスト教の本や宗教の本を読むのを禁じていて、どうして唯一と言えるのか。証拠はあるのか。本物のお札を知っているからニセ札を見抜くことができる。根拠もなく、ただ信じているだけではないか。


・エホバの証人の救済論におけるエゴイズム
まもなくハルマゲドンが来て、エホバの証人の信者だけが天国で楽しく暮らすが、それ以外の人は地獄に堕ちると説く。

組織は信者でない人たちが殺されるのを待っているんだ。


鋭い指摘です。

コメント
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