依存症について本を読んだり、話を聞いたりしてますが、わからないのが依存と依存症の違いです。
依存症は進行性の病気で、やめるか、死ぬかだと聞いています。
しかし、ある知り合いは若いころ、酔っ払って道路に寝て財布を取られたことがあると言ってまして、今も酒好きですが、家庭や仕事に問題はないようです。
別の知り合いはパチンコにはまり、奥さんの財布から金を取ったり、子供に「500円ちょうだい」と頼んだりしたことがあり、いくらなんでもこりゃまずいと思って、それ以来パチンコはしていないそうです。
知り合いたちは依存症ではないのか、それともコントロールを取り戻すこともあるのか。
加藤力『家族を依存症から救う本』に、依存症のおおよその目安として次の4つの要素があげられています。
1「物質に対するコントロールの喪失」
ある物質を使う場所・時間・頻度・量をコントロールできなくなること。
2「物質探索行動の強化」
ある物質を手に入れるために時間とエネルギーを費やすこと。
嵐の日でも遠いところまでお酒を買いに行く。
覚せい剤を買うために他人にうそをついたり、金銭を盗む。
3「離脱症状の出現」
使用を中断したときに様々な精神的・身体的症状が生じること。
4「社会的な障害の出現」
恐喝や窃盗の事件を起こしたり、交通事故を引き起こす。
別居や離婚、友人や近所の人とのトラブルやケンカなど。
遅刻や欠勤が増え、失職する。
借金を繰り返し、多額の負債を抱える。
孤独感や絶望感が強くなり、自傷行為を繰り返す。
ギャンブル依存症の本人と家族の手記をまとめた冊子を某氏にいただきました。
本人の手記はそういうものかというのが感想ですが、巻き込まれた家族、特に子供は凄惨です。
アダルトチルドレンとは、もともとはアルコール依存症の親を持つ子供たちという意味ですが、依存症の一番の弊害は子供への影響だと思います。
警察の少年育成官の話を聞いたことがあります。
泥酔して保護した若い女性を翌日の昼ごろ自宅へ連れて帰ったら、2歳ぐらいの子供が起きてじっとしていた。
その子供は母親がいないことに慣れている。
こうした事例が目につくようになってきた。
アミティ母子プログラムディレクターのシャナ・キャンベルさんは『虐待という迷宮』で、スピードをやると「時間の感覚もなくなる。たとえば母親が子どもを置いて出かけても、ついさっき出ていって、すぐに帰ってきたばかりだと思ってしまう。それが一日だと思っていたのに、実際には何週間もたっていたなんてこともあります」と話していますが、親がいない間に子供が餓死してしまうことだってあり得ます。
少年育成官の話の続きです。
虐待の対応は子供の危険度によって変わり、保護者がアルコール依存症、もしくは薬物依存症の場合だと危険度が高くなる。
依存症がない人に比べて自己コントロール能力が低く、ブレーキが効きにくいから。
虐待と子供の非行にはつながりがあり、虐待を受けて児童相談所に通告される子供が触法少年(13歳以下の犯罪した子供)として通告されることが増えてきた。
家では保護者から暴力を受けている子が、外では万引きをしたり、自転車を盗んだりして補導される。
非行の低年齢化で一番の問題は、非行に走った年齢で学力は止まり、勉強できなくなること。
5年生で万引きをするようになると、5年生で学力は止まるし、中学1年生で夜遊びしてたむろするようになると、中1で止まる。
放っておけば5年生の学力で一生を過ごすわけで、お客さんの名前が読めなかったら仕事にならない。
非行の低年齢化は人の一生を左右する。
親を何とかしないといけないわけですが、受刑者や依存症者には子供のころから暴力や性的虐待を受けつづけた人が多いそうです。
つまり虐待の連鎖です。
『虐待という迷宮』で上岡陽江さんは、「男性の薬物依存者には多いのですが、たとえばお父さんがアルコール依存でお母さんに暴力を振るっていたとする。(略)
そのような人にとっては、無力感、うちひしがれた感じ、どうしようもないやるせなさの表現が、怒りや暴力になってしまう」と語っています。
アメリカでは、2009年、刑務所や拘置所といった矯正施設に収容されている受刑者数はおよそ230万人、人口比で日本の12倍。
保護観察や仮釈放中などを含めると720万人になり、スイスの全人口に相当します。
坂上香『ライファーズ』によると、アメリカには母親か父親が刑務所に服役中の子供が、少なくとも190万から230万人はいて、その大半が10歳以下で、43人の子供に1人、もしくは2.3パーセントの子供の親が受刑者です。
アフリカ系の子供は15人に1人が親が刑務所に入っているから、アフリカ系の子供が最も深刻な影響を受けている。
暴力や性的虐待の被害を受けている子供、親が受刑者だったり依存症者だという子供は、自分も親と同じようになる確率は高いでしょうから、そうした子供たちへの支援が必要となります。
キャンベルさんが働く母子施設は、19歳から64歳の30人の女性と11人の子どもがいて、6人の母親が子どもと暮らしています(スタッフは16人で、そのうち男性が5人)。
全員、刑務所から出所する際に矯正局に紹介され、自発的に来た人です。(逃げたのはこの2年間で4人)
こうした施設が日本でもあちこちにできたらいいのですが。
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