某氏より「溜息通信 58」をいただく。
「政権交代は民意か」として、比例区の得票率から完全比例制であれば各党の議席数がいくらになるか算出してあった。
民主党 203
自民党 128
公明党 54
共産党 33
社民党 20
みんなの党 20
国民新党 8
新党日本 3
幸福実現党 6
得票数から言えば、民主圧勝、自民大敗ではないわけである。
小選挙区では自民党は9.09%得票率を減らし、民主党は10.96%増やしており、比例区では自民党が11.43%減り、民主党は11.35%増えている。
「わずか10%、得票数にして約700万票が自民党から民主党に移るだけで、激的な議席数の転換をもたらしている」
小選挙区制では得票数がそれほど違っていなくても、大量議席を獲得することができる不公平な制度だということができる。
選挙制度を小選挙区制に改正する時に日本も二大政党制になるべきだ、二大政党制は成熟した政治制度だと言われた。
だが、『グローバル化する厳罰化とポピュリズム』に掲載されているタピオ・ラッピ=ゼッパーラ博士の論文によると、二大政党制がいいというわけでもないらしい。
民主的政治システムには合意形成的民主主義と多数決民主主義がある。
合意形成的民主主義は多党制で、比例代表制の選挙システムを採り、少数与党政権か大連立政権である。
多数決民主主義は二大政党制となる。
「合意形成的民主主義は、民主主義の質、民主的代表制、そして公共政策の志向性における情け深さと紳士的傾向などの点において多数決民主主義より優れている」
多数決民主主義と合意形成的民主主義の違い。
「多数決原理は勝者が全てを独り占めすることを意味するのに対し、合意形成はできる限り多くの観点を考慮に入れることを意味する。多数派によって動かされる政治が通常二大政党の競合と対決に基づくのに対して、合意形成によって動かされる政策は妥協を模索する」
多数決民主主義の特徴。
「多数決民主主義は競争と対決に基礎を置いている。多数決民主主義は亀裂を先鋭化させ、競争を高め、葛藤を促進する」
「多数決民主主義や競争的な政党システムにおいては、野党にとっての主たる仕事とは、社会的・政治的危機を叫び、与党を権力の座から引きずりおろす火急の必要性があることを説得すること、である」
「二大政党制は、対立型で、相手の政策を完全否定する傾向が強いため、いろいろな意味で危機感が煽られやすい傾向にある」
合意形成的民主主義の特徴。
「合意形成的民主主義においては、自分と意見を異にする者との関係をつねに良好なものに維持する必要性がある」
「合意形成的モデルは、多数派のもとに権力を集中させるのではなく、さまざまな方法で権力を共有し、拡散し、抑制しようとする」
「合意形成はまた、安定性と討議をもたらす。そこでは政治的変化は漸進的なものであり、政治的リーダーが一度に総入れ替えとなるような多数決型のシステムのように全面的なものではない。合意形成的民主主義においては、新たな政府が劇的な方針転換を行って耳目を引く必要はほとんどない」
「合意形成においては、過去の政府が達成したことを批判するのは、成功ではなくむしろ失敗に終わることがより多いし、また、政策や改革がその過程においてできる限り多くの政党間の協働によって準備されていく、という事実からも、そもそも批判や不満が高まりにくいのである」
「政治的意思決定プロセスは合意形成によって特徴づけられる。そこでは積極的に協働し合う、よく調整され、集権化された諸利害集団との交渉が模索されるのである」
タピオ・ラッピ=ゼッパーラ博士の論文を読む限り、二大政党制よりも連立政権や少数与党のほうがましだという気がする。
そうはいっても、公明党が54議席、幸福実現党が6議席も獲得するのは正直言っていやだけども。
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