三日坊主日記

本を読んだり、映画を見たり、宗教を考えたり、死刑や厳罰化を危惧したり。

民間療法と健康器具・食品のアヤシさ(3)

2023年02月27日 | 問題のある考え

絵門ゆう子さんが草の粉療法をしているころ、気功の「先生」を紹介してもらった。
『がんと一緒にゆっくりと』によると、特殊な能力を元に、整体のような気功のような治療を行う。
「先生」は、がんは「8回でカタがつく」と言った。
そして、草の粉療法を絶賛した。

そのころ、あるクリニックを訪れた。
Oリングテストによって、その人に合う健康食品を勧める。
Οリングテストとは、親指と他の指でΟの字になるように輪を作り、患者は輪が開かないように力を入れ、テストをする人は両手で輪を開こうとする。
それによって、がんの状態やどの健康食品が合うかなどを判定する。
そのクリニックで、がん細胞が活動しなくなるというマイクロ波の治療を受けた。

言うまでもなく、Οリングテストは疑似科学ですし、マイクロ波の機械は医療器具として認められているものではありません。

がんの告知から9か月後、スポーツクラブで叫び声を上げるほどの痛みが首を走った。
そのクラブに詰めているカイロプラクティックの先生に紹介してもらい、3回治療を受けたが、痛みはひどくなった。
後日、聖路加病院に入院した時、首の3か所で骨が折れていることがわかったが、この治療によって折れた可能性が高い。

カイロプラクティックの先生からレントゲンを受けるように言われた。
MRIで調べると、医師はがんの骨転移である可能性が高いと言った。
しかし、絵門ゆう子さんは聞き入れなかった。

マイクロ波治療後のOリングテストで「もうがんの波動はなくなった」と言った医者に相談すると、「それは骨転移かもしれないよ」と言われた。
草の粉療法の先生は「首は転移なんかじゃありませんよ。栄養が不足してなっているんです」と言い、毎日チーズをたくさん食べ、卵を1日に少なくとも3個は食べるようにと言われ、無理して食べ続けた。
しかし、首の痛みはひどくなるばかりだった。

自分が信じようとしているやり方に対する苦言だけは聞きたくないのだ。だから、ただただ耐えた。


「人間は自分が信じたいことを喜んで信じるものだ」はカエサルの『ガリア戦記』にある言葉だそうです。
逆に言うと、自分が信じたくないことは耳に入りません。

気功の先生は「悪くなっているのは心臓だ。あなたが受けたMRIの検査のせいだ。MRIは強烈な磁気の波動だから、それを、あなたのような影響を受けやすい体質の人が受けると、心臓が変になるんですよ」と責めた。
さらに、「あなたがMRIを受けた邪気のために、私の体はね、あなたの治療をする度に具合が悪くなるんですよ」と言う。

私はね、自分の体のエネルギーを使って治療してるんですよ。体を張ってるんだ。このままじゃあなたの持ってくる邪気のために、私の体が使い物にならなくなってしまう。だいたいね、今は3万円なんていう値段でやっているけど、ちょっと前までは、入会金を250万円、一回の施術料は30万円いただいていたんですからね。3万円なんかで体をボロボロにされたんじゃ合わないんですよ!


草の粉療法は4か月で50万円くらい。
気功の施術は1回40分で3万円を数十回。
ということは、絵門ゆう子さんは気功に百万円ぐらい支払ったわけです。
1回30万円だと1千万円。

スピリチュアルや民間療法、健康器具など疑似科学では波動という言葉をよく見かけます。
すべての物質が出している未知のエネルギーという意味で使われているようです。
ウィキペディアの「波動 (オカルト)」によると、物理学での波動はwave(波)の訳語ですが、オカルトや代替医療における波動はVibrationの訳です。
「振動」と翻訳すべきところを「波動」や「エネルギー」と訳すことで、物理学の裏づけがあるように思わせているわけですが、科学的な根拠はありません。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B3%A2%E5%8B%95_(%E3%82%AA%E3%82%AB%E3%83%AB%E3%83%88)
ちなみに、気功も波動だそうです。

気功の「先生」にそこまでボロクソに言われても、絵門ゆう子さんはなぜ通い続けたのでしょうか。

なぜ通い続けることになったのか。それは、施術の度に西洋医学を糾弾する言葉巧みな彼の話に感化されていったのと、症状が安定している時も「この施術の効果かもしれない。やめて急に悪くなったらどうしよう」と、やめることが怖くなっていたからでもある。


痛みに耐えきれず、2002年12月26日、聖路加病院に行く。
「がんなんて簡単ですよ。すぐに治りますよ」と安易に言った民間療法の「先生」たちと違い、聖路加病院の先生たちは決して「治る」という言葉は使わない。

しかし、絵門ゆう子さんは民間療法の「先生」たちの呪縛から解き放たれたわけではありません。
病院に行かず、玄米菜食、自然療法だけで乳がんを治そうとしている女性の考え。

がんには「私のところに来てくれてありがとう」って感謝すればいいの。私は最初からそうしてきた。がんは、心の持ち方とかいろいろその人の悪かった点を教えてくれるありがたいものなのよ。そういう声に耳を傾ければ、必ず治る。


聖路加病院に入院する前日、その女性は「病院になんて行って、水を肺から抜いたりいたらダメになるわよ。原点に戻って、きっちり玄米を炊く生活をしてやり直した方がいいと思う」と言った。
草の根療法の「先生」が玄米菜食を否定しても、絵門ゆう子さんは玄米菜食への愛着があったようです。

その女性の言葉はその後、何度も頭の中で反響した。
助言に従わないことに罪悪感を感じる。
肺の水を抜いた後も、心は揺れていた。
不安が頭をもたげ、「ほんとうにこれでよかったのか」と葛藤する。
針生検をしたが、針によってがんが刺激され悪化する、怖いものという思いがあった。
間違った知識や情報、極端な思い込みでがんじがらめになっていた。
一度刷りこまれた「怖い」という思いからすぐに解放されるものではない。
行きつ戻りつ考え方が変わっていく疑心暗鬼の状態に陥った。
これは一種の洗脳です。

コメント
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