三日坊主日記

本を読んだり、映画を見たり、宗教を考えたり、死刑や厳罰化を危惧したり。

民間療法と健康器具・食品のアヤシさ(1)

2023年02月12日 | 問題のある考え

親が自分の信念を通すために子供を死なせる自由はありません。
では、自分が死ぬかもしれない選択をする自由はあるのでしょうか。
たとえば、ガンになり、手術や化学療法で治る可能性があるのに、民間療法を選び、まわりが反対しても考えを変えないがいます。
家族は無理にでも手術をさせるべきか、本人にまかせるべきか。

左巻健男『陰謀論とニセ科学』は、ガンになって民間療法や健康食品にはまった人として、スティーブ・ジョブズと絵門ゆう子さんを紹介しています。

スティーブ・ジョブズは膵臓ガンが見つかり、転移する前に手術すれば生存確率が上がると診断されたが、手術を拒否した。
ニンジンと果物のジュースを大量にとる絶対菜食主義に、鍼やハーブ薬、サメ軟膏、コーヒー浣腸などを併用し、心霊治療なども取り入れた。
スティーブ・ジョブズが実践したゲルソン療法は、1930年代にマックス・ゲルソンが提唱したガンなどが治る食事療法である。
果物、野菜、子牛の生の肝臓を混ぜた自然食(液体)を摂り、毎日コーヒー浣腸をして有害な胎毒をデトックスする。

がん情報サイトにゲルソン療法について書かれています。

・この治療法の理論は、体内から毒素を除去して免疫系の働きを高め、体の細胞内の過剰な塩分をカリウムに置き換えることで、病気を治癒するというものです。
・ゲルソン療法の臨床研究はほとんど発表されていません。
・どのタイプの浣腸であっても何度も注入すると有害となる可能性があります。
・米国食品医薬品局は、がんやその他の疾患の治療法としてゲルソン療法を承認していません。
・がん患者さんは従うべき適切な食事法について、医療提供者と相談するべきです。

https://cancerinfo.tri-kobe.org/summary/detail_view?pdqID=CDR0000453628&lang=ja

民間療法や健康食品・器具は「デトックス」「免疫力を高める」という言葉をよく使います。
デトックスとは体内の毒素を排出することです。
汗の成分には有毒物質も含まれていますが、その量はわずかなものです。

ヨーロッパの医療は近代まで瀉血、吸角、下剤、ヒルによる吸引など、毒を排出するというデトックスでした。
もっとも、逆に体力を奪うだけで、病気を治す効果はありませんでした。

デトックスのための健康食品・器具が販売されていますが、毒素とは何か、どうして排出できるのかなど説明はされません。
効果のないものが多く、有害なものもあるそうです。

免疫力を高めるという惹句もあやしい。
ある健康食品が免疫力を高めると謳っていても、そのことが論文で報告されているといったことはまずありません。
免疫力を高めるとされているものが配合されているという程度です。

絵門ゆう子『がんと一緒にゆっくりと』を読み、民間療法の信奉者はカルトの信者と似ていると思いました。

2000年10月25日、乳がんのⅡ期からⅢ期だと告知を受ける。
医者から、乳房を残す温存手術はすでに無理、手術と抗がん剤による治療を提示された。
しかし、手術と抗がん剤による治療は拒否し、その病院には二度と行かなかった。

西洋医学を拒否したのは、母親のがん死が理由である。
子宮がんだった母親は抗がん剤を打った時から急変、亡くなった。
母親の「病院にさえ行かなければこんなことにならなかったのにって思えてならないのよ」という言葉が残り、それ以来、西洋医学を怖がるようになった。

以前、取材した信頼する医者に相談すると、西洋医学の治療を勧められ、「乳がんは治せるがんなんや! なんで治療しようとしないんや!」と諭された。
しかし、その言葉に従わず、「自然療法、民間療法、健康食品、そして東洋医学の治療に賭けてみる」という旨の礼状を出した。

西洋医学の通常治療だけは受けない。がんなんて自分が作ったものだから自分で治してみせる。

周りが何を言っても聞く耳を持たず、そのくせ「がんが治せる」という怪しい話にはすぐ飛びついた。

首が痛くなったことや、肺や心臓がおかしくなったことと乳がんとを結びつけず、「その痛みはがんとは関係ない」「そうしているうちにある日突然治る」と言い切ってくれた民間療法の「先生」たちの言葉を信じ、首の痛みが自然に消える日が必ず来ると、自然療法を続けた。

代替療法を行なっている病院を初めて訪れると、院長は「がんについては、私ほど良く知っている人間はいませんから」と言った。
ところが、持参した検査データは見ようとしない。

どういう治療をするのか尋ねると、「温熱療法とか、がんを取り出してアルコールに漬けて、もう一度体に戻す治療です」と答えた。
温熱療法は、がんは高熱に弱いため、「42度以上発熱する病気になる菌」を患者の体に植えつけて感染させ、患者がその高熱に三日間耐え、乗り越えるとがんが消滅する。

アルコール漬け治療は、がん細胞を外科的手術で取り出してそれをアルコールに浸した後、もう一度同じ体内に戻す手術をするというもの。
その療法の臨床データや、高熱で衰弱しないかなど質問をすると、「どうせ治療を受けるのは、末期の人だからね」という返事だった。

断食の治療院の指導者は当初、「手術も抗がん剤もしない」という考え方に応援してくれたが、断食を終えて腫瘍マーカーが少し悪くなったことを知ると、知り合いの医者を紹介すると言い出した。

断食の次に、がんやその他の難病を抱えた生徒が通う玄米菜食の料理教室に行く。
食事は植物から命をもらうことだと捉え、心の持ち方まで指導される。

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