三日坊主日記

本を読んだり、映画を見たり、宗教を考えたり、死刑や厳罰化を危惧したり。

死刑と独裁国家

2022年02月01日 | 死刑

「FORUM90」Vol.179に、ミッテラン大統領の下で死刑を廃止したロベール・バダンテールのインタビューが載っています。

バダンテールは死刑を執行している国の多くは独裁国だと語っています。
ヨーロッパで死刑制度があるのはベラルーシだけ。
アメリカで死刑制度のある州の多くは南部連合だった。
サウジアラビアやイランなどイスラム原理主義の国では女性や子供も処刑される。
中国や北朝鮮は何人執行したか、その人数すら公表しない。
人権と死刑制度はつながっていると思いました。

では、死刑制度を存続し、執行もしている日本はどうなのでしょうか。
2018年3月、国連人権委員会のからの217件の勧告のうち、日本政府は死刑制度の廃止や一時停止を求める勧告、核兵器禁止条約への署名を求める勧告などの受け入れを拒否しています。
https://www.asahi.com/articles/ASL357WL1L35UHBI05D.html

なぜ日本は死刑を廃止しないのでしょうか。
岩瀬達哉『裁判官も人である』にこうあります。

元刑事裁判官のひとりは、法務省が頑なに反対する理由を明かした。
「死刑を廃止すると米国のように終身刑を作らないといけない。・・・だから法務省は死刑廃止には反対なのです」
犯罪への防止効果というのは単なる理由づけであって、本当のところは財務省の予算折衝が面倒なうえ、看守の負担増だけでなく、さまざまな仕事が増えるのが嫌だからだというのが、死刑制度廃止の妨げになっていたのである。


イギリスでは、エヴァンス事件という無実の人が死刑執行されたことがきっかけとなり、1965年に死刑が廃止されました。
1992年にアメリカでイノセンス・プロジェクトが開始されました。
無実を主張する受刑者や死刑囚が真犯人であるかどうかをDNA鑑定によって調べたところ、2011年までに292人が無実であることが明らかになっており、そのうち17人は死刑囚でした。

日本でも、福岡事件や菊池事件など冤罪と思われる事件で処刑されています。
飯塚事件ではDNA鑑定が有罪の決め手となりましたが、当時のDNA鑑定は精度が低く、誤審ではないかと言われています。
しかし、さほど話題にはなりません。

足利事件、布川事件、東電OL殺害事件など再審無罪になった事件では、いずれも自供しています。
それほど取調べが厳しく、冤罪が今も作り出されているのです。

そもそも、検察は証拠の開示をしないし、裁判所も証拠を開示するよう命令しません。
被告に有利な証拠があっても握りつぶされるので、再審請求が認められることはほとんどありません。

また、日本では著名人や政治家で死刑に反対だと訴える人は少ないように思います。
大谷洋子「バイデン政権で米国は死刑廃止へ」(「FORUM90」VOL.176)によると、アメリカでは選挙で死刑廃止を訴える候補が少なくありません。

2020年のアメリカ大統領選挙の民主党候補20人は、死刑問題を聞かれ、1人を除いた全員が死刑に反対だと明確に答えた。
その1人は「不公平に適用されるので停止」と言っている。

カマラ・ハリス副大統領は、2004年のサンフランシスコ地区検事の選挙戦で、死刑は求刑しないと公約を掲げて当選した。
その翌年ぐらいに警察官が射殺された事件が起きたが、カマラ・ハリスは死刑を求刑しなかった。
被害者家族はもちろん、警察官の団体や州の上院議員からも批判を浴びた。
しかし、70%がカマラ・ハリスを支持するという調査もあった。
その後、カマラ・ハリスは2010年にカリフォルニア州司法長官に、2016年に上院議員になった。

カリフォルニア州で死刑を求刑してきた郡は7つある。
それ以外の小さい郡はお金がないので、死刑を求刑することができない。
ロサンゼルス郡はアメリカにおいて最も死刑を求刑する郡の一つ。

昨年11月に行われたロサンゼルス地区検事の選挙に当選したジョージ・ギャスコンは選挙中から死刑は求刑しないと言っている。
ジョージ・ギャスコンの当選後は、現在係争中の死刑事件でも死刑求刑を取り下げる予定にしている。
そのため、検事局では辞職する人も出ている。
ジョージ・ギャスコンは自分の方針に従わない人はやめてもらっても結構だという方針をとっている。
カリフォルニア州の検事が集まる組織から激しい非難がされたが、ロサンゼルス検事局はこの団体からの脱退を決めた。

ロサンゼルス郡の隣のオレンジ郡の地区検事はものすごく保守的で、ロサンゼルスで起こった殺人事件をオレンジ郡に渡すよう、裁判所に申し出た。
ロサンゼルス郡では死刑を求刑しないので、オレンジ郡で死刑を求刑すると言っている。

もちろん、こうしたことは認められない。
これは、死刑がいかに地理的要件と地区検事の死刑へのスタンスで恣意的に求刑されるかが顕著に表れている例である。

ちなみに、アメリカでは法律は上下院で決められるため、大統領令でできることは司法省と司法長官に死刑の執行停止を指示することまでで、大統領の一存で死刑廃止はできないそうです。

州によって、州議会で死刑廃止を決めることができる州と、住民投票でしか死刑廃止できない州がある。
連邦レベルで死刑が廃止されると、州レベルでの死刑廃止の動きが出てくる。

日本はアメリカの圧力に弱いですから、アメリカに期待しましょう。

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