三日坊主日記

本を読んだり、映画を見たり、宗教を考えたり、死刑や厳罰化を危惧したり。

ジェシカ・ブルーダー『ノマド 漂流する高齢労働者たち』(2)

2021年08月11日 | 

ジェシカ・ブルーダー『ノマド 漂流する高齢労働者たち』によると、アメリカの構成者、特にひとり暮らしの高齢女性の生活は厳しいです。

高齢者の大半は公的年金が唯一の収入源となっているが、年金額は驚くほど少ない。
退職後に働かずに過ごせる見込みの人は17%しかいない。
中流層の半数近くは、退職後は日に5ドルの食費でやりくりすることになる。

2016年に65歳以上のアメリカ人被雇用者数は900万人ちかくで、10年間で60%増加し、全労働者に占める高齢者の割合も増え続けている。

アメリカでは2015年の国勢調査によると、貧困ラインを割っている高齢者の数は、女性は271万人と、男性(149万人)の倍近い。
ひとり暮らしの高齢女性は6人に1人以上が貧困ライン以下の生活をしている。

公的年金は平均で女性は男性より月341ドル少ない。
男性の収入1ドルに対して女性の収入は80セント程度と賃金格差があるから。
平均寿命は女性が男性より5年長いから、女性は男性より少ない貯蓄で長期間やりくりしなければならない。

アメリカでは毎年1万2000~3万6000人がインフルエンザで亡くなる。
治療費を払えないから。
アメリカ人の3人に1人以上が歯科治療をカバーする保険に加入していない。

経済学者モニーク・モリシー

私たちが直面しているのは、退職後の保障が無に帰すという、近代アメリカ史上初の事態です。後期ベビーブーム以降に生まれた人たちは世代が進むほど、リタイア後にそれまでと同程度の生活をするのが難しくなっています。


家を失ってホームレスになる人、車で生活しながら移動するノマドは高齢者ばかりではありません。

町山智浩『トランピストはマスクをしない』によると、アメリカでは家族単位でホームレスになるケースが多く、学齢期の子どもが含まれる。
公立学校の生徒の1割がホームレスないしホームレスに落ちる寸前だといわれる。
カリフォルニア州では30万人以上の子どもがホームレスだと推測されている。
ホームレスの7割が英語の基礎テストに落第し、6割が高校を卒業できない。
そんな子どもたちに最低賃金以上の仕事を得ることは難しい。
ノマドは10代や子連れもいます。

「コロナ禍のアメリカで立ち退き猶予措置が失効 数百万人がホームレスになる恐れ」(2021年8月2日)
新型コロナウイルス禍で家賃が払えなくなった人向けに米政府が設けていた立ち退き猶予措置が、7月末で期限切れとなった。数百万人の借り手が住む場所を失う恐れが出ている。(略)
家主でつくる団体は立ち退き猶予措置に反対し、家賃収入なしでは住宅ローンや税金、保険料の支払いに苦慮する家主も一部で出ている。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2021/08/post-96822.php

全米で50万人がホームレスになっており、ロサンゼルスでは年間5千人が路上で死んでいますが、10倍近い人が家から追い出されるわけです。
家賃が滞納しては、土地価格の急騰で、家主も税金が払えなくなります。

それでも、行政や民間が貧困対策をしているそうです。
各都市がホームレスの住処を建て始めている。
サンフランシスコ市は2024年までに1700世帯を収容できる住居を建設すると発表。
ニューヨークでは毎年1億ドルの予算で2800世帯を目標に建設計画を立てている。
ホームレスが自分の住居を持てるように手助けをするため、シェルターと食事を提供し、就労のカウンセリングや医療ケアを行うことで自立を助ける民間団体がある。


カリフォルニア州では、個人事業主に対しても正規雇用と同じ待遇にしなければならないとする州法が成立した。
これが実施されると、企業の負担が3割増しになる。

では、日本はどうなのか。
各国の男女の格差を分析した指数であるジェンダーギャップ指数は、日本は2018年は110位、2019年は121位、2020年に156カ国のうち120位。
韓国や中国、ASEAN諸国より低い。
ところが自民党は選択的夫婦別姓、LGBT法案、クオータ制に反対しています。

竹中平蔵さんはこんなことを言っています。

私が、若い人に1つだけ言いたいのは、「みなさんには貧しくなる自由がある」ということだ。「何もしたくないなら、何もしなくて大いに結構。その代わりに貧しくなるので、貧しさをエンジョイしたらいい。ただ1つだけ、そのときに頑張って成功した人の足を引っ張るな」と。(東洋経済 2012年11月30日)

https://toyokeizai.net/articles/-/11927?page=2

人件費を切りつめることが大好きな新自由主義者の竹中平蔵さんが内閣参与をしているのですから、緊縮財政を続け、医療や福祉などは切り詰めるでしょう。
非正規雇用(女性が多い)の正規化など弱者のための政治は難しく、アメリカのことを言っておれなくなるように思います。

コメント
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