三日坊主日記

本を読んだり、映画を見たり、宗教を考えたり、死刑や厳罰化を危惧したり。

ボー・バーナム『エイス・グレード 世界でいちばんクールな私へ』

2019年12月27日 | 映画

クールとは、「イケてる」「カッコいい」ということ。
14歳のケイラは、Youtubeに自分のチャンネルを作り、「自分らしくなるには」「自信を持つには」といった自己啓発的なメッセージを発信しています。
しかし、視聴する人もチャンネルに登録する人もほとんどいない。

現実のケイラは、生徒同士の投票で「学年で最も無口な子」賞に選ばれるような子で、学校には話をする人もいないようです。
イケてないわけです。

同級生の誕生日の水着パーティーにしかたなく行きます。
お腹はぼてっとしてて、水着から肉がはみ出てる。

ボー・バーナム監督はケイラのイタい水着姿を強調して撮っています。

それでも、学校でその同級生の女の子に話かけますが、まるっきり無視。
スクールカーストの最底辺なわけで、見ててつらくなります。

『エイス・グレード』のHPには、オバマ前米大統領が2018年の年間ベスト映画に選出、モリー・リングウォルドは「思春期を描いた映画の中で、過去最高かもしれない」と大絶賛しているとあります。

オバマ前大統領やモリー・リングウォルドの中高生時代がケイラみたいだったとは思えませんが、学校が楽しくない、親しい同級生がいないという学生生活を過ごした人は多いのかもしれません。
クールでなければならない、しかし私はクールではない、ダメ人間だと思って、しんどい思いをしている人が少なくないのでしょう。

ケイラは父親と2人暮らし。
父親は干渉しすぎではありますが、娘をとにかくほめる。

6年生の時のタイムカプセルには2年後の私へのメッセージがあり、学校を楽しみ、友達がたくさんいて、恋人もいるかも、という自分の声を聞く。
現実はまったく違ってる。
ケイラはそのタイプカプセル、つまり夢と希望を燃やしてしまいます。

タイムカプセルを燃やしながら、父親に「私が母親になって、娘が私みたいだったら悲しいと思うだろう」と言ったら、父親は「ケイラのような子がいて幸せだ」とか、「誇りに思っている」とか言ってほめまくる。
100%受け入れているわけです。
それで『エイス・グレード』の終わり方もすんなり納得。

池谷裕二『できない脳ほど自信過剰』に、しつけについてこんなことが書かれています。
たとえばドアを開けることは、開けないと外に出れないから、イヌやネコもドアを開ける。
しかし、ドアを閉める行為は自然には身につかない。
ドアを閉めることはマナーだから。
おもちゃを片付ける、歯を磨く、挨拶をするなどを身につけるためには、人に「こうしなさい」と教えてもらわないといけない。
だから、しつけは必要。

しつけには「ほめる」(強化)と「叱る」(弱化)の2つの方法がある。
① ほめるだけ。
② 時にほめ、時に叱る。
③ 叱るだけ。
どれが一番効果があるか。

ネズミを使った実験で、迷路を右に行くようにネズミに学習させるため、右の道の先にチョコレートを置く方法(強化)と、左に進んだら電気ショックを与える方法(弱化)を行う。
結果は、チョコレートを使うだけの場合がもっとも学習成績がいい。
次が強化と弱化、チョコレートと電気ショックの組み合わせ。
電気ショックだけだとほとんど学習できない。
叱ると、探索しようという意欲、つまり自発性が減ってしまう。
人間の感情とネズミの実験とを一緒にしてはいけませんが、ほめることの大切さを思いました。

もう一つ、8年生ということは中学2年なのに、来年度は高校に入るとはどういうことなのかと不思議に思いました。
ネットで調べると、アメリカの小中高は学区によって異なっているが、一般的には6・2・4制で、1年から5年までが小学生、6年から8年が中学生、9年から12年が高校生なんだそうです。

ケイラ役のエルシー・フィッシャーのインスタグラムを見ると、そんな太っているようには見えません。
『エイス・グレード』のためにクリスチャン・ベールのように肉体改造したのでしょうか。



コメント (4)
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