大学生1・2年生の「就職したいと思う企業・業種ランキング」アンケート調査で、地方公務員が1位だそうです。
しかし、公務員の仕事は厳しいようです。
全国の児童相談所(児相)に勤める児童福祉司のうち、2018年度にうつなどの精神疾患で休職した人が、2・2%にあたる57人にのぼることが毎日新聞の調査で判明した。母数が違い単純比較はできないが、多忙とされる教員の精神疾患の休職率(0・55%、17年度文部科学省調査)の4倍にあたる。子どもを保護する際の保護者対応などに苦慮する心理的負担が背景にあるとみられ、専門家は「児童福祉司の人員増だけでは負担解消にはならない」と指摘する。(毎日新聞2019年11月27日)
弁護士会の「子どもと暮らしを守る公務が貧困を生む?」というシンポジウムに行ってきました。
チラシと講師の方たちのお話を私なりにまとめました。
児童相談所が察知しながら子供を救えない事件が繰り返し発生している。
子供を守るためには、児童虐待やDV被害者の発見、支援にあたる児童指導員、保健師、保育士、教員、スクールカウンセラー、DV相談員等の業務を充実させることが不可欠。
ところが、小泉内閣による2000年代の「聖域なき構造改革」以降、福祉や教育、男女平等をはじめとする生活関連の公務サービス予算は縮小傾向をたどった、
三位一体改革のため、税源のない地方自治体は財政難で人件費が出せないので、不安定雇用、低賃金で乗り切るため、職員を削減して非正規を増やした。
家事、育児、介護は家でしている仕事だから誰でもできる、給料が安くてもいい、という発想。
その結果、仕事の重さと待遇の悪さ、賃金の安さで人手不足、そしてサービスの悪化となった。
同時に公務員バッシングが続けられてきた。
公務員はいい給料をもらって生活が安定している、定時で帰れると思われている。
しかし、困った人の相談を受ける公務員も困った状態にある。
求められる公務サービスは増大し、そうした住民サービス、各種相談業務を非正規公務員が担うようになった。
負担過多(物理的・人的)、支援者の知識・経験不足など、支援を阻む要因があるが、非正規公務員の問題も原因の一つ。
総務省によると、2016年、臨時・非常勤職員の数は全国で64万人(女性が全体の約4分の3)で、2012年から約2万4千人増加した。
もっとも、総務省の調査にあがっていない人たちがいるので、実数はもっと多い。
非正規公務員は、最初は補助的な仕事をしていたが、今は担当業務の中心を担う。
家庭児童相談室は全国に855室あり、家庭児童相談員は1623人。
そのうち非正規公務員が93%で、女性が86%を占める。
そもそも家庭児童相談員は児童相談所の仕事を補完する軽微な相談だったが、2004年の児童福祉法の改正により、家庭児童相談員が主体的に児童虐待など、児童相談所が行なっていた業務を担うことになった。
子供の虐待通告を受けて、48時間以内の安否確認を含め、児童福祉司の仕事を引き受ける。
婦人相談員はもともとは売春婦の自立支援が仕事だったが、業務が拡大し、ストーカー被害やDV被害の支援も行うようになった。
スクールソーシャルワーカーは、生活困窮、児童虐待、不登校、イジメ、引きこもりなどの支援を行う。
非正規公務員は相談業務が多いが、話を聞くだけだから簡単な仕事だと思われている。
しかし、児童虐待、DV、生活困窮の問題は専門的支援が必要。
専門職の質の向上が求められ、関係の法律や施策、制度など学び、理解して把握しなければいけない。
しかし、非正規公務員は他県での研修が自己負担となる。
家庭相談員、児童相談員をしている講師は、365日24時間対応という激務なのに、手取りで12万円で、大卒の初任給を上回らないそうだ。
別の講師は10年間昇給なし、手当なし。
調理員は年に200万円未満で、おまけに時給なので夏休みは無給。
厚生年金や社会保険を引かれると、時給が安いから生活できない。
スクールソーシャルワーカーは各中学校に1人で、時給で働く。
非正規公務員を保護する法律がない。
専門家なのに使い捨てにされる。
2018年に導入された「会計年度任用職員」制度は、非正規公務員の処遇改善を目的としているが、「1年有期」の不安定な非正規公務員を合法化・固定化することになりかねない。
1年有期ではできない仕事もあるのに、いつ切られるかわからない。
担当者が変わると、相談者は同じ話を繰り返さないといけないし、信頼関係が築きにくい。
おまけに、苦情を上司に言ったら首を切られるかもしれないので言えない。
正規職員から「正規職員よりも仕事ができるようになってはいけない」「あなたの代わりはいくらでもいる」と言われることがある。
民間(会社)とは違い、公共は利益にならないことを行うのである。
ところが、たとえば保育所の民間委託にしても、民営化で給料が下がり、仕事量が増え、サービスが悪くなるくせに、働き手に過剰な負担を強いる。
先日、非正規公務員にボーナスが支給されるというニュースがありました。
非正規労働者の待遇改善を含む政府の「働き方改革」を背景に、47都道府県が来年度から、非正規の職員にもボーナスに当たる期末手当を支給することが1日、共同通信のアンケートで分かった。都道府県の非正規職員は2016年で13万8千人。年間の人件費は判明分だけで計約130億円膨らむ見通しで、国の財政支援を求める声が相次いだ。年末の政府予算編成で焦点の一つになりそうだ。
改正地方自治法などが来年4月に施行され、市区町村も含め期末手当が支給できる。自治体全体の非正規職員は64万3千人。平均月給は17年度の事務職員で14万5千円。「官製ワーキングプア」とも呼ばれる。(共同通信2019年12月1日)