三日坊主日記

本を読んだり、映画を見たり、宗教を考えたり、死刑や厳罰化を危惧したり。

「死刑」を訴える被害者遺族の声をきく~闇サイト殺人事件から10年~(1)

2018年03月01日 | 死刑

ニコニコ動画の「「死刑」を訴える被害者遺族の声をきく~闇サイト殺人事件から10年~」という討論番組の文字起こしがされているサイトを万年中年さんに教えてもらいました。
http://originalnews.nico/45811
「闇サイト殺人事件」の被害者遺族である磯谷富美子さんのお話を読むと、被害者や遺族の方が死刑を求めるのは当然だと思います。
しかし、それでも死刑存置論には賛成できません。

この討論番組で死刑存置派が主張しているのは次の2点だと思います。
①被害者遺族が死刑を求めているから死刑は必要だということ
②冤罪と死刑制度の是非は別問題だということ

裁判員や被害者遺族の処罰感情で判決に違いがあっては、法の下に平等という原則に反することになると思います。

死刑を求める被害者遺族ばかりではありませんから。

髙橋正人弁護士はこのように語っています。

人を殺した以上はあなたも命をもって責任をとりなさいということです。死をもって責任をとってもらうのが被害者の気持ちだと申し上げています。(略)
どこの刑法の本にも書いてありますが、刑法の本質は応報刑論です。何かと言えば、悪いことに対しては悪い報いで行うという、「目には目を歯には歯を」です。これがまさに応報です。

この意見にはいくつかの疑問を覚えます。

・どんな殺人事件でも死刑にすべきなのか
警察が2016年に摘発した殺人事件(未遂を含む)770件のうち、55%が親族間で起きています。
https://mainichi.jp/articles/20170411/ddm/012/040/061000c
つまり、被害者遺族の多くが加害者家族・親族でもあるわけです。
そして、動機の多くは心中や介護・養育疲れです。
この人たちも「死をもって責任をとる」べきでしょうか。

・殺人と傷害致死
殺人罪の刑罰は死刑または5年以上の懲役(無期懲役も含む)ですが、傷害致死罪は3年以上の有期刑です。
殺人と傷害致死の違いは、殺意のあるなしです。
https://www.bengo4.com/c_1009/c_1208/gu_147/
滋賀県の料理店で店主が客から2時間以上も暴行を受けて亡くなるという事件がありました。
加害者2人は傷害致死で逮捕されています。
殺意がなかったとしても、ご家族にしてみたら殺されたとしか思えないでしょう。
しかし、遺族は法律で定められた最高刑で納得するしかありません。
死刑制度がなければ、死刑以外の判決を受け入れるのではないでしょうか。

・加害者の自殺
加害者が事件を起こしたあとに自殺することがあります。
自殺するという形で「死をもって責任をと」ったのでしょうか。

・応報刑

刑罰の歴史は寛刑化の歴史です。
現在はただ罰するだけでなく、犯罪者の更生、社会復帰が考えられています。
死刑の執行も苦痛の少ないものに変わっています。
アメリカでは被害者遺族が執行に立ち会うことができます。
死刑囚が苦しんだように見えなかったことに釈然としない遺族もいるそうです。

応報ということだったら、被害者は苦しみながら死んだのだから、死刑囚も同じような苦しみを与えて殺すべきだという意見が出てきます。

車でイエメン人の子供をはねて殺してしまった人を父親が車で轢き殺すというイエメンや、夫の不倫相手に硫酸をかけられて顔がただれ両眼を失明した女性に、加害者を失明させる権利があるという判決が下りたイランのように日本もすべきだということになります。
http://blog.goo.ne.jp/a1214/s/%E3%82%A4%E3%82%A8%E3%83%A1%E3%83%B3

ジョー横溝:「死刑を執行する刑務官のことを考えたら制度に賛成できない」というお話はいかがですか。
髙橋:刑務官は大変ですか? では被害者に執行のボタンを押させてください。それで結構です
青木:それは仇討ちですよね。
髙橋:仇討ちではございません。国家の判断がなく、自分の判断でやるのが仇討ち。国家がやらないなら私たちがやりましょう、というだけのことです。

憲法36条で「公務員による拷問及び残虐な刑罰は、絶対にこれを禁ずる」とあります。
被害者遺族にとっても死刑の執行は残虐なことだ感じるのではないかと思います。

コメント (26)
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