三日坊主日記

本を読んだり、映画を見たり、宗教を考えたり、死刑や厳罰化を危惧したり。

事故物件の損害賠償

2017年12月23日 | 問題のある考え

精神科医の野田正彰氏が講演でこんな話をしています。

アパートで自死すると、膨大なお金を請求されることがあります。葬儀の席に管理会社がやって来て、「お祓い料を払え」「部屋と隣の部屋に人が入らなくなったから家賃三年分を払え」「入り手がいなくなったので家を建て替えないといけない。建築費を払え」などと、遺族に執拗に請求します。多くの家族は自死したことを隠そうとしますので、泣き寝入りして、黙って払います。私たちの社会が自死対策を言いながら、いかに残酷な社会かということです。

家族が突然死んでただでさえつらいのに、金をむしり取る大家や不動産屋はひどい、と思いました。

不動産屋のニュースレターが郵便受けに入ってて、それに事故物件について書かれてて、大家や不動産を責めればいいという、そんな単純な話ではないことを知りました。
入居者が殺害されたり、自殺や孤独死したりした建物や部屋は「事故物件」と呼ばれます。


不動産を取引する場合には、物件の重要事項を客に説明する義務がある。
雨漏りの有無、白アリ被害、地中埋設物などを告知書で買い主に伝える仕組みになっている。
「物理的」「法律的」な問題が隠れていた場合の責任の取り方について、契約書の条文で取り決めている。

判定が難しいのが「心理的瑕疵」の問題。
その物件で殺人事件があったとか、自殺した人がいる場合は、心理的な問題が瑕疵となる。
自殺があると、現場を跡形もなく修繕し、リフォームを行うなどしても、「告知」をしなければ、後から自殺があったことを知った借り主(買い主)に損害賠償請求をされてしまうリスクがある。
事故物件のある土地を売却し、建物を取り壊して新築しても、敷地内であったことなので、不動産売買する際にはきちんと事件や事故があったことを告知しなければいけない。
「告知」をすれば、借りたい(買いたい)人が少ないので、賃料や価格を安くして取引をすることになる。
建物を壊して更地で売る場合の価格は、通常であれば5~7割下がる。

では、いつまで告知しなければならないのか。

この告知義務は曖昧で、何人目まで告知する義務があるのか、告知義務は何年間なのかといったことは法令では定められていない。
「5年は告知したほうがいい」「10年は必要だ」「1人、入れ替わればいい」など、いろんな話が伝えられる。
しかし、告知義務が必要でなくなる期間は法律で定められているわけではなく、裁判例も地域性やその時の状況で事例が異なる。
50年前に起きた殺人事件現場の物件でも、告知すべき瑕疵があるとした判決例もある。

大家は借り主の相続人である遺族に、以下の支払いを請求することになる。

①残置物撤去・消毒費用
②貸室の原状回復費用
③賃料減額分の損害賠償
とてもつらい交渉であることに例外はない。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20171102-00006894-bengocom-soci
これは日本人の宗教観(霊信仰)と関係する問題です。

「大島てる事故物件公示サイト」といって、大島てるという不動産屋が自殺、孤独死、事故死などで死亡者の出た物件の住所や部屋番号、元入居者の死因を公開していました。

不動産業界の関係者はこのサイトを活用している人が多いそうです。

鈴木信行『宝くじで1億円当たった人の末路』に、大島てる氏へのインタビューが載ってます。

「大島てる事故物件公示サイト」にはマンション名だけでなく、部屋番号まで載っているのはなぜか。
告知義務があるのは事故があった部屋だけとされ、隣室や階下で事故があった部屋に、何も知らずに住んでいるということはある。
殺人事件などがあった場合、マンション名だけがひとり歩きしてしまうと、関係ない部屋の持ち主まで風評被害を受けかねない。

「事故があったのに何事もなかったかのように振る舞い、通常どおりの家賃で入居者を募集する業者も存在します。そんな悪徳業者や悪徳大家から、消費者を守るのも当サイトの重要な役割の一つです」

こんなことを大島てる氏は言ってますが、何から「消費者を守る」のでしょうか。
小野不由美『残穢』のように、怨みを残して死んだ人間の地縛霊がいつまでも災いをもたらすからでしょうか。
しかし大島てる氏によると、事故物件では事故が連鎖的に起きる場合があるが、それは『残穢』のような心霊現象ではなく、ほとんどが合理的な説明ができるそうです。

たしかに、自殺や殺人があった部屋は気色悪いという気持ちは理解できます。
しかし、そうした不安が生じるのは、成仏していない霊で脅す霊視商法、霊感商法に惑わされているからです。
祟りなどないのであれば、わざわざ騒ぎ立てる必要はありません。

「大島てる事故物件公示サイト」では「孤独死」も事故物件と定義しています。

「入居者の立場からすれば「孤独死は事故にあらず」という理屈は通らないと思うんです。そもそも、「すぐ死体が発見されたから事故ではない」と言いますが、なぜ施錠された部屋の中の死体がすぐ発見されたのか考えてみてください。それだけひどい悪臭がもれ出ていたからです」
大島てる氏の説明にうなずくわけにはいきません。
だからどうしたというのでしょうか。

部屋をきれいにすればすむ話です。

とはいえ、この事故物件の告知義務や遺族への弁償請求といった問題はそんな簡単には片付かないでしょう。

何が、どのように、なぜイヤなのかはよくわからないけど、とにかくイヤだという、理屈じゃ納得できないところにこの問題の難しさがあります。

コメント (11)
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