三日坊主日記

本を読んだり、映画を見たり、宗教を考えたり、死刑や厳罰化を危惧したり。

帚木蓬生『ギャンブル依存国家・日本』(3)

2015年11月18日 | 

2007年、橋下徹大阪市長がカジノ構想をぶち上げたとき、そんなのできたらろくなことにはならないのではと思いましたが、帚木蓬生『ギャンブル依存国家・日本』を読み、その意を強くしました。

アメリカ以外の国のカジノは、自国民への被害を防ぐために、地元の人間はカジノにはいれないようになっている。
ヨーロッパのカジノの外観は全く目立たないように規制されており、中にはいっても、静寂が支配している。

ところが、日本ではギャンブルを総合的に統轄する機関がなく、無法地帯に他ならない。

パチンコ店は規制などどこ吹く風で、テレビや新聞で広告し、建物は派手で、夜には空に向けてビームが放たれ、店内では音と光は耳をつんざくようである。

勝ったときの記憶のみを強化する方策に精通しているのが、パチンコ店です。勝ったときは、光の洪水になり音が響き、否応なく勝者が興奮する仕掛けになっています。反対に負けたときに、電流が流れるような仕組みであれば、負けの記憶こそが残り、誰もギャンブルをしなくなるのにと、私はいつも思います。

託児所を完備している店、買い物帰りの主婦が生鮮食品をいれておけるよう冷蔵庫つきのロッカーを設けている店、ATMを設置している店。

2014年、「時代に適正した風営法を求める会」という、パチンコ店内での換金化を立法しようという国会議員が集まった会の発起人集会があったし、カジノ法案の成立をめざす「国際観光産業振興議員連盟」には206名の国会議員が名前を連ねている。
こんな議員たちは全員落選させるよう運動すべきだと思います。

カジノ解禁の目的は、経済効果と雇用創出で、金さえもうかればいいのかという話ですが、実際にはうまくはいかない。

アメリカのアトランティックシティでは、観光客はもくろみよりも少なく、落ちる金もわずか、逆にカジノ維持のための社会的な費用が増え、税金はむしろ高くなった。
周辺の商店街は次々と閉店し、カジノの周辺はゴーストタウン化した。
犯罪発生率がアメリカでトップになり(それまでは50位)、児童虐待は増え、青少年の逮捕者が多い地域となり、乳児死亡率も十代での妊娠率も州で一番高くなった。
マカオや韓国の江原でも事情は同じ。

カジノを誘致しようとする大阪市はJRや地下鉄の延伸を考えているが、工費は5000億円以上かかり、インフラ整備で財政赤字が膨らんでいくことは間違いない。

大阪市議会は今年6月、IR(カジノを含む統合型リゾート)の調査費7600万円を3千万円に減額修正したとのことで、お金だけはどんどん使っているわけです。

他の先進国にカジノがあって、日本だけにないのはおかしいという理屈は通じない。

パチンコ店は全国に約1万2000店ある。(ローソンの店舗数が1万1000、セブンイレブンが1万7000)
パチンコ店のギャンブル機器の数は約460万台で、全世界のギャンブル機器の総数が720万台だから、およそ3分の2が日本に存在する。
外国にはパチンコも競輪も競艇もオートレースもなく、日本はすでにギャンブル王国なのだから、カジノを作ればギャンブル地獄になる。

それなのに、厚労省や精神医学界からはカジノ法案反対の声は上がっていない。

厚生労働科学研究費補助金を受け、障害保険福祉総合研究事業の一環として、ギャンブル障害の研究班が立ち上がったのが2007年、帚木蓬生氏を含む20人弱の研究協力者が集められた。
この研究班の目的は、将来カジノを創設した際、どういう害が出るかを探るためだった。
ところが、ギャンブル対象としてパチンコ・スロットが除外されていた。

カジノ法案なんて、金さえ儲かればいい、自分さえよければどうなろうと知ったことか、という話で、かつて経済成長を第一として公害問題を放置していたことを思い出します。
それにしても、橋下市長は政界引退を明言したのに、大阪維新の会という政党を作るそうで、こんなに発言がころころ変わる人とその一党を支持する大阪市民とは不思議な人たちだと思います。

コメント
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