アンリ=ジョルジュ・クルーゾー『恐怖の報酬』を見ました。
ウィリアム・フリードキン監督のリメイク版(1977年)は見ていますが、どんな映画だったか中身はまるっきり覚えていない。
でも、ハラハラドキドキした記憶はあります。
双葉十三郎氏は「ロイ・シャイダー以下の配役が弱体なうえ、あらゆる角度からクルーゾ作品に遠く及ばなかった」と評しており、楽しみにして見たわけです。
だけども、期待したほどではありませんでした。
食い詰めた男たちが流れてきた南米の田舎町の描写がとにかく長い。
ようやくニトログリセリンをトラックで運ぶことになるわけですが、4つの難関をいかに乗り越えるかが興味のポイント。
黒澤明の『隠し砦の三悪人』はこのアイデアをいただいたのではないかと思いました。
でも、最初の「なまこ板の道路」というのはでこぼこ道らしいのですが、揺れないようにするんだったら、ゆっくり走ればいいと思うのですが。
それに、今の映画の特殊効果を見慣れているので、この程度ではさほどハラハラしない。
そして、ラストがいかにもとってつけたようで、リメイク版のロイ・シャイダーの疲れた顔のほうがよかったように感じました。
小林信彦氏がテレビでロッセリーニ『戦火のかなた』を見た時のことを『地獄の観光船』でこう書いています。
正直にいって、佐藤忠男さんのすぐれた解説に頷きながらも、「戦火のかなた」が、私にとって、〈かなた〉のものとなったのを私は感じた。家族たちは、途中で眠ってしまい、「名作だ!」と宣言したてまえ、私は、巨人・阪神戦の結果を気にしながらも、ポー河のパルチザン処刑の有名なシーンをぼんやり眺めていた。
昔はよかったとよく言われますが、こと映画に関しては、年間ベストテンを見ても近年の映画は昔と比べて遜色ないと思います。