光市事件の差し戻し審があったが、大澤孝征弁護士は「みのもんたの朝ズバ!」で「(同じ)弁護士として恥ずかしい」とコメントした。
それで大澤孝征『犯罪少年』(2000年発行)を読んでみた。
副題が「凶悪な10代後半、驚愕の10代前半」というんだからすごい。
もっとも十代前半と後半の犯罪の違いをこの本では説明してはいないが。
最初はまともなことを書いている。
善悪の大小、殺意の濃い薄い、あるいは実行するかしないかは別にして、そういう気持ちが自分の中にもあるということを、人間も社会も、正面から見つめる必要があるのではないだろうか。(略)
人間には悪の部分、影の部分、いけないとされている部分があり、善の部分、光の部分、よいとされている部分があり、その両者が揃ってはじめてちゃんとする人間、正常な人間たりうるのではないだろか。
「人を殺す経験をしたかった」というので女性を殺した豊川市の17歳についてもそう。
ところが、手のひらを返してこんなアホなことを書く。
そんなのは大澤孝征の思い込みにすぎないじゃないか。
そして、こんなトンデモ発言。
信じられないくらいの偏見だが、成育環境が悪い子供が多いことを知らないのか。
「今の刑罰は、犯罪の内容に比べて軽すぎる」
「諸外国に対し、日本の量刑はあまりにも軽い」
こういう誤解はよく耳にするが、きちんと調べて書いてほしい。
大澤孝征の死刑肯定論。
こういう考えの弁護士に刑事事件の弁護を依頼する人がいるのだろうか。
オウム真理教の井上嘉浩被告は地裁で無期懲役の判決について。
「見せしめ」とはね。
大澤弁護士は凶悪な少年犯罪が急激に増えていると指摘している。
しかし、少年犯罪の激増、凶悪化、低年齢化というのは間違い。
他にもウソが多い。
『犯罪少年』が書かれた2000年の仮釈放者の平均在所期間は20年以上である。
仮釈放が認められず50年以上在所している人もいるし、獄死する人もいる。
ちょっと調べればわかることなのにウソを書く。
大澤弁護士は少年犯罪は「戦後平等主義の負の遺産」だと言い切り、教育論に話は展開していく。
「少年犯罪が増えて生きている背景に、悪しき平等主義がある」
「戦後教育にも、かなりの問題があったのではないだろか」
「明治・大正時代には、日本人はもっと背筋がピンとしていた。武士の精神のようなものがあった」
武士道か。
江戸時代、武士は1割ぐらいで、ほとんどが農民だったのに、どうして武士道が日本精神なのか。
そもそも明治、大正に生まれてもいないのに、見て来たようなウソを言う。
そのあと、どうして検事から弁護士へ転身したのか、テレビ出演をしまして…、という自慢話で終わる。
そういう本でした。