三日坊主日記

本を読んだり、映画を見たり、宗教を考えたり、死刑や厳罰化を危惧したり。

周防正行『それでもボクはやってない』

2007年02月06日 | 映画

毎年の私のささやかな楽しみは、「キネマ旬報」ベストテン特集号を買うことぐらい。
2006年のベストテンは、『時をかける少女』が17位、『パプリカ』は41位、あまりにも低いとか、ベストテン採点表を眺めながら、しばし快楽を味わう。

今年のキネ旬ベスト1は周防正行『それでもボクはやってない』で決まり。
山根貞男「日本映画時評」の『それでもボクはやってない』について論じた文章の最後に、「そういえば、周防正行は、わたしの目に触れたかぎり、文章でもインタビューでも、主人公の無罪=冤罪ということは断言していない。この映画の真に驚くべきところは、そこにある」と書いてあった。
周防正行監督は、冤罪を問題にするだけではなく、裁判そのものを考えようとしており、主人公が有罪であってもかまわないのかもしれない。

妻が知人に、『それでもボクはやってない』は面白かったですよ、と勧めたところ、「あれは重たそうだから」という返事だったそうだ。
そりゃ、なんだかわからないうちに痴漢にされ、警察に連れて行かれ、頭ごなしにどなりつけられ、拘留されetcという不条理の連続、意味不明の言葉が飛びかうシュールな雰囲気の中で進行していく裁判、そして題名から予想していたとおりの結末なんだから、気分良く映画館を出ることはない。
だけど、これが現実である。

本来、裁判とは「疑わしきは罰せず」だから、検事が有罪を証明するはずなのに、実際は被告が無罪を証明しないといけない。
だけど、個人の力で警察、検察に対抗して無罪を証明することはきわめて難しい。
刑事裁判の有罪率は99.9%、被告が否認している場合でも99%が有罪。(『それでもボクはやってない』では3%が無罪と言っていた)
有罪判決のうち、冤罪がどれだけあるのだろうか。

それはともかく、「重い」話は嫌われる。
『それでもボクはやってない』にしても、周防正行監督11年ぶりの新作なんだから、もっとヒットしてもいいのに。
社会問題の話は重たくなりがちだから受けないのだろうか。

だけど、妻は社会問題に関心のないし、映画を見ると頭が痛くなるから嫌いだという人間だが、『それでもボクはやってない』は見てよかったと言ってる。
一人でも多くの人に『それでもボクはやってない』を見に行ってもらいたいです。

コメント (14)
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