春休みとなり、家族で旅行に出かけた。楽しみにしていた旅行なのに、天気はあいにくの雨模様。さっそく予定していた遊園地を翌日にまわした。
さて、雨の中一体どこに行こうかと思案の末、宿の人の話を聞いて、新しくできたという巨大ショッピングモールに行くことにした。わざわざ旅先に来てまでも買い物なんかしなくてもとも思ったが、雨に中の旧跡めぐりなんて子どもには、ブーイングのたね。ほしいものを一つだけ買ってもよいという条件で、商談成立。
畑やビニールハウスを横目に走ること三十分。突然視界に巨大な建物が出現した。都会に住んでいると、逆にこんなに大きな建物に出くわすことに驚きを感じる。ノアの方舟とかスペースコロニーといった感じ。
中に入るとそこには一つの町が形成されている。まず驚いたのは、広さである。店の中というよりも、歩行者天国の新宿を歩いているような気分になる。まさに店内は街路である。一角にはレストラン街があって、世界の料理が味わえる。
大規模な店鋪と小売りのテナントが共存し、それぞれの特色を生かして調和を図っている。たいていのものはそろえることができ、子どもを飽きさせない工夫もあちこちにあり、巨大なアミューズメントが階ごとに仕掛けられている。駐車場は三五〇〇台。県内だけでなく他県からも買い物に来ている。
ふと思い出したのが、『インディペンデンスデイ』という映画だ。巨大な宇宙船がやってきて都市を壊滅していく話。
のどかな田園風景にそびえたつこの巨大なスペースコロニーは、まさに巨額の富を吸い尽くす異星人の宇宙船のようだ。田舎にない都会の雰囲気は、訪れるものをセレブな感覚へといざなう。
不思議な空間に私たち家族もいつの間にか餌食にされていた。