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社会保険労務士としての日々の業務を行う中で、考えたこと、感じたこと、伝えたいことを綴る代表コラム。

年収の壁・支援強化パッケージ

2023-10-02 01:08:05 | 社会保険

9月25日に岸田首相が公表したのは、年収が一定額を超えるとパート労働者らの手取りが減る「年収の壁」問題について対策パッケージでした。日経新聞によると「まずは106万円の壁を乗り越えるための支援策を強力に講じていく」と強調した。労働者1人当たり最大50万円を支給する助成金制度を創設すると説明したということです。

正直106万円と130万円の年収の壁を意識することなく、保険料を納めることになり多少手取りが目減りをしても、働く方が良いと個人的には思っています。根本的な制度の改正が必要とも考えます。従って今回の年収の壁・支援強化パッケージは納得感のないものなのですが、あっという間に10月1日から適用されるということなのでどのようなものか少し見てみたいと思います。

支援・強化パッケージは3つの項目からなっています。

●106万円の壁対応 
①キャリアアップ助成金コースの新設・社会保険適用促進手当の標準報酬算定除外
・短時間労働者が被保険者の適用となる場合に、労働者の収入を増加させた事業主に最大で3年間費用の助成が行われます。
・助成金の一つのコースなので当然開始前に「計画の提出」が必要その上で『手当』を支給して6か月後から「申請」をしていきます。
・その時支払う『手当』を社会保険適用促進手当として支給する場合は本人負担分の算定において標準報酬月額、賞与額の算定基礎に入れなくて良いということです。
 社会保険適用促進手当とは、10.4万円以下の標準報酬の人が社会保険に加入し発生する保険料の本人負担分相当額です(最大2年間)。
 (標準報酬月額10.4万円の場合➡年額上限18.8万円、9.8万円の場合➡17.7万円、8.8万円の場合➡15.9万円)

キャリアアップ助成金の助成は3年間、社会保険適用促進手当は最大2年間と異なるのは、助成金の3年目は手当の追加支給ではなく賃金を18%以上増加させていることが条件になる仕組みのためで、背景には賃金の増額にいわば会社としても慣れるための追加支給をしておきながら3年目には自然と賃金をアップさせ、数年後には壁を意識せず働く、ということのようです。

このパッケージを使うのであれば、会社はまず①キャリアップ助成金の計画を立て、②社会保険適用促進手当を給与に上乗せして、③6か月後から助成金の申請をする。ということになります。

会社の出費が多いように思いますが、とにかく人手不足でお金を多く出して採用・定着が必要という企業にとってはある意味良いのかもしれません。

●130万円の壁対応
被扶養者の年収が130万円以上になったばあいでも直ちに被扶養者認定を取り消すのではなく、一時的な収入の増加であれば、通常提出する過去の課税証明書、給与明細書、雇用契約書に加えて人手不足による労働時間延長等に伴う一時的な収入変動である旨の事業主の証明を添付することで、迅速な認定を可能とするということです。

●配偶者手当の対応
配偶者手当の存在が就業調整の要因となっているため、見直しに向けて周知を図る、というものです。

年収の壁・支援強化パッケージ
https://www.mhlw.go.jp/content/12501000/001150695.pdf

上記パッケージは2年間の暫定措置であり、社会保障審議会年金部会での改革案はだいぶ進んでいるようです。パッケージはこの改革案が実行されるまでのつなぎという意味合いと考えるべきかもしれません。

先週コロナ禍行われていなかった早稲田法学研究科の菊池ゼミ社会人クラスの交流会が行われました。久しぶりであったためか、沢山の方にご参加頂いて、現役生を囲み和やかな時間を過ごすことができました。やはりリアルで久しぶりに先輩や仲間に会うのは話も弾み楽しいです。会場のお店に行く前に大学によって撮った写真が幻想的に撮れていました。

※来週はブログはお休みさせて頂きます。

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