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社会保険労務士としての日々の業務を行う中で、考えたこと、感じたこと、伝えたいことを綴る代表コラム。

株式報酬制度にかかる社会保険料

2020-07-12 23:03:10 | 社会保険

日経新聞の1面記事に「自社株を役員報酬、導入5割増 株主視点の経営促す」という記事が載っていました。以前事務所内でも株式報酬制度の話題が出ており、「役員に、自社の現物株を報酬として付与する制度」であるということなのですが、社会保険料の算定基礎にすべきか否かということでした。近年、採用する企業が増えており、「6月末時点で800社超と過去1年間で5割増え、上場企業全体の2割に達した。」ということです。

株式報酬制度を採用する理由としては、報酬と株価を連動させることにより株価を高める経営を役員が行うインセンティブになるという狙いがあります。「野村証券によると、譲渡制限付き株式の導入企業は6月末で811社と1年前に比べて46%増えた。譲渡制限付き株式では企業は報酬分の株式を新たに発行するか、すでに保有する自社株から役員に支給する。支給された株式は一定期間売却できない。短期ではなく、中長期での株価上昇を目指す経営を促す効果が見込まれている。」と記事にありました。

この譲渡制限付き株式による役員報酬とストックオプションはどこが違うのかということなのですが、ストックオプションは、「決められた期間に自社株を割安な価格で購入できる権利を与える。」という方法で、株式を渡すのか権利を与えるのかという点で異なっています。欧米では株式を渡す方式が主流になっているということで、権利を与えるよりは現物株を渡す方が株主目線での経営ができるということでストックオプションから切り替える企業が日本でも増えているということです。この株式報酬ですが、社会保険料の対象となるかということでこちらについてはQ&Aが出ています。

Ⅱ.株式報酬、業績連動報酬に関する Q&A
~平成 28 年度・平成 29 年度税制改正を踏まえて~ 
Q13 株式報酬を付与する場合、社会保険料の算定の対象になりますか。
健康保険・厚生年金保険の保険料の額や保険給付の額の計算の基礎となる「標準賞与額」の範囲は、賃金、給料、俸給、手当、賞与、その他名称を問わず、被保険者が労務の対償として受けるすべてのもののうち年 3 回以下のもの(ただし、大入り袋や見舞金のような臨時に受けるものを除く)とされており、役員に対する株式報酬についても、原則として標準賞与額に含まれるものと解されています。ということで標準賞与額として取り扱うことになります。

またストックオプションについては、「自社株をあらかじめ定められた権利行使価格で購入する権利を付与するものであり、権利の付与自体は社会保険料を徴収すべき報酬に該当しないとされています。また、権利行使による株式取得も社会保険料の対象とならない」と上記Q&Aで示されています。なお、労働基準法の賃金に当たるか否かという点については通達(平成9.6.1基発412号)で示されており、権利行使の時期や株式売却時期をいつにするか労働者が決定するものとしているため、ストックオプションから得られる利益は、労働の対償ではなく、労基法第11条の賃金にはあたらない、とされています。考え方としてはやはり株式を直接受けるのと権利を付与されるとの違いによるものという整理となるかと思います。

株式報酬、業績連動報酬に関する Q&Aは以下のURLから

https://www.meti.go.jp/press/2017/04/20170428007/20170428007-1.pdf#search='%E8%AD%B2%E6%B8%A1%E5%88%B6%E9%99%90%E4%BB%98%E3%81%8D%E6%A0%AA%E5%BC%8F%E3%80%81%E7%A4%BE%E4%BC%9A%E4%BF%9D%E9%99%BA'

東京ここのとこコロナ感染者が200人超えということで非常に心配な状況です。今週末も自発的緊急事態宣言ということで自宅でほぼ自粛生活を送りましたが、今日はお天気がここ最近では珍しく良かったので、クリーニングを出しに行くついでにほど近い庭園美術館が最近開館したので庭を散歩しました。お庭に入るだけでも200円の入園料がかかるのですが一面芝生で人も少なく、のんびりできました。

   建物は庭園美術館です

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