先日就業規則のリーガルチェックをしていたところ、休職期間の通算規定の部分で気になる表現がありました。一定の休職期間をとり復職した後どの程度勤務したら再度休職を認めるかという部分は、会社が決めることができます。例えば休職期間が終了して職場復帰をしたあと「3カ月以内に再度の休職をする場合」は休職期間を通算することとする規定を設けるわけですが、この3カ月は1年以内とする場合もあり、当然その期間が長い方が通算を厳しくみているということになるわけです。
また通算されるのは「同一又は類似の疾病」とする場合がほとんどです。この「同一又は類似の疾病」の判断は誰がするのかという点が気になったわけです。会社が判断するとすれば、会社は医学的知識が必要ということになりますので通常は無理であると思います。やはり産業医等が行う、又は診断書によることになるのだと思いますが、同一の疾病の判断の場合健康保険法の傷病手当金の際の判断基準になる「社会的治癒」の考え方も考慮に入れる必要があると思います。
1月号の月刊社労士に社会保険審査会の採決事例が載っており、そこに「社会的治癒」のことが以下のように書かれていました。
ところで、社会保険の運用上、医学的には当初の傷病が治癒していない場合であっても、社会的治癒として認められる状況が認められるときは、再度発病したものとして取り扱われる。そして、社会的治癒があったといい得るためには、その傷病につき医療(予防的医療を除く。)を行う必要がなくなり、相当期間、通常の勤務に服していることが必要とされていると解するのが相当である。
この記事では何か月間の出勤が社会的治癒として認められたのかは具体的には書かれていませんが、生命保険会社の方から概ね6か月間と聞いたことがあります。さらにこの件の場合はその間欠勤がなく、夜勤も務め、リーダーにまで任命されています。さらに医療内容から見ると、抗うつ薬と睡眠薬・精神安定薬を服用し「何ら症状のない時期が続き、治癒とみなしえると考えます。抗うつ薬の維持療法、精神療法は簡易な形で維持しました」という医師の指導下において、予防的医療の範囲と認めえる治療を受けながら、従来と同様の勤務ができていた、いわゆる社会的治癒と認められる状況にあったとするのが相当である、とされています。結論としては、本件傷病は既決傷病が一旦社会的治癒した後に、再発した別傷病と認めるのが相当であるとし、法定給付期間を超えた請求であるとして新たな傷病手当金を支給しないとした原処分は取り消されています。
休職の場合の、「同一又は類似の疾病」の判断についても傷病手当金の判断が生きてくると思われ、「社会的治癒」の考え方は念頭に置いておくことが必要だと思います。
先週は全国社会保険労務士会連合会の主催する「倫理研修」の講師を無事務めることができたので、今週末はかなり心の負担が軽くなりました。会員に倫理を講義するというのはかなり荷の重い仕事で、昨年は年末年始にかなり時間をかけて準備をしました。しかし準備をする中で自分自身業務の中で体験してきたこと、資格取得校で講義した社労士法の内容の一つ一つの意味、今まで知ろうとしなかった社労士会の規程や綱領ことや、企業の倫理感の欠如が発覚したのちの状況、他士業の倫理についてなど多くのことを学べたと思います。TACで教えていたころと同様できるだけ自分の学んだ内容を伝えたいという気持ちは伝わったかもしれません。皆さんうつむくことなく真剣にスライドを見て聴講頂きました。感謝いたします。やはり「教えることは教わること」なのだと思いました。
これから3月末までほぼ毎週、セミナーが色々なテーマで続きます。体調管理をしっかりして頑張ります。