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社会保険労務士としての日々の業務を行う中で、考えたこと、感じたこと、伝えたいことを綴る代表コラム。

適格退職年金について

2019-11-17 21:24:50 | 年金

日大学院の授業で適格退職年金の話が出ました。適格退職年金は平成13年の確定給付企業年金法と確定拠出年金法の企業年金2法ができる前は、企業にとって税制上の優遇措置が受けられる企業年金の一つとして存在していた制度です。すでにあれから15年以上経過してしまった今となっては忘れ去られた制度なのかもしれません。しかし企業年金の沿革の中では、制度改革の要因ともなった重要な存在であると考えています。

特に私がTACの講師としてある程度経験と知識が積みあがった時期に、企業年金の大改革があったため印象深いのかもしれません。また平成5年に開業した当初、顧問先から退職金制度を入れたいとご相談を受けた際、たまたま最初の顧問先が中退共に加入しており要領がわかってたので中退共をご紹介したものの、先輩社労士から適格退職年金があると聞かされてもう少し調べるべきだったかなと反省したこともよく記憶しています(結果的には良い選択だったのですが)。

適格退職年金、いわゆる適年は企業年金2法ができる前①厚生年金保険法を根拠とする厚生年金基金、②法人税法を根拠とする適格退職年金、③法的根拠のない自社年金を包括した企業年金の中の一つでした。そもそも厚生年金基金を始めとして、当時の企業年金は退職金制度の一部の年金制度として、使用者が内部積立で支給する退職一時金と併せての定年退職後の生活の保障と考えられていました。

この制度がなぜ確定給付企業年金と確定拠出年金の企業年金2法に代わることになったかという経緯はいくつかの要因があるわけです。簡単にいってしまえば、昭和40年代の高度経済成長期に創設された厚生年金基金は長くサラリーマンの定年退職後の生活保障の役割をしてきましたが、バブル崩壊後金利の落ち込みとともに積立金の運用収入が悪化し、加入企業が追加掛金を再三求められる状況となり、脱退する企業が相次ぎさらに積立金不足に陥るという悪循環となったことがあげられます。基金から脱退する際はこれ以上積立不足にならないよう過去勤務債務分の一括徴収金という多額の置き土産を求められ、当時あれこれ勉強しながらいろな企業のご相談にのったりしていました。厚生年金基金と同様完全積立方式であった適格退職年金についても同様の状況となり、しかも適格退職年金は積立金の管理についての規制が非常に杜撰といってよく、ふたを開けてみたら積立金が底をついていたというケースもかなりあったと聞いています。受給権保護が図られず、権利保障について極めて不十分な制度ということで平成14年以降の新規の契約が認められず最終的に平成24年3月末で全て廃止となりました。

ちなみに中退共がなぜその中で生き残っているかというと、中退共は当時から確定拠出の仕組みで運用されており、要するに運用成績が悪くてもそれに合わせた退職金が支払われる仕組みであったため、問題にならなかったということがいえます。今考えると当時世の中がそれでかなり騒ぎになったことも懐かしく思い出されます。しかし厚生年金基金・適格退職年金から、確定給付企業年金(DB)、確定拠出年金(DC)、または中退に全ての企業が以降したわけではなく、3階部分の年金がなくなってしまったケースがかなりあるようで、今考えると残念気がします。3階部分の年金しっかりと確保できていれば、老後の資金の不足といわれている状況がもう少し良かったのではないか思うからです。

愛媛の社会保険労務士会の研修で出張した翌日10年ぶりに四国に住んでいる大学の友人のところに行ってきました。東京から松山までは飛行機で1時間で到着しあっという間であったのですが、友人の住んでいる宇和島までは1時間半かかるため、帰りの飛行機合わせて戻るとなると、列車の本数が限られるため、2時間くらいしか時間が取れなかったのですが、駅まで迎えに来てくれた姿を見てうれしかったです。

愛媛県会の会長や役員の方たちの和やかな雰囲気がとても良く、熱心に時に楽しそう受講頂いた会員に少しでヒントを提供できていたら嬉しいと思います。

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