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夏休み旅日記~8月16日

久しぶりに夜雨が降った。
降ったりやんだりする度に夫は車中泊中何度も目を覚まし、
そのつど車の窓を閉めたり開けたりしてくれていたそうだ。
私は雨が降ったことすら気づかないまま朝まで快眠。

薬研(やげん)温泉「かっぱの湯」へ。
昔、この辺で道に迷ったお坊さんがガケから落ちてケガをし、
動けずにいて困っていたところに大きなフキの葉っぱを頭にかぶったかっぱが現れた。
気がついたらお坊さんは体をフキの葉に包まれて温泉に入れられていた。
おかげでお坊さんは元気を取り戻し、助けてくれたかっぱに感謝した。
といういわれ。その温泉がこの「かっぱの湯」だという。
フキの葉で体を包んでから温泉に入れてやったというのが何とも心優しい配慮ではないか。

清流に面した野趣あふるる場所にあり、道路上からも丸見えの無料混浴露天風呂
「かっぱの湯」に夫を残し、私はさらに奥にある「夫婦かっぱの湯」へ。
こちらは男女別で有料(200円)だが湯船が広くて露天の景色も良く気持ちがいい。
しかし終始アブとの戦いであった。

今日宿泊予定の宿まで目と鼻の先に来ているのだが、時間つぶしのために遠回りすることにした。
かっぱの湯から更に奥に向かって進む。
「この先は未舗装の林道です。」という看板が立ちはだかる。
しかし地図上では「あすなろライン」という名前がついている道だ。
まぁ対向車も来ているし、何とかなるだろう。

その考えが甘かった。
生半可な砂利道ではなかった。
大きな石と水たまりの続くでこぼこ山道、
ハンドルを小刻みに動かしながら慎重に慎重に走る運転手の夫の額にはあぶら汗。
隣に座る私も最初は「青森ヒバの天然林だ~いい香り~森林浴だ~」
などと窓外に腕を出したりしながら能天気に浮かれていたが、
進む程に荒れていく山越えの道。夫の緊張が伝わり徐々に無言になる。



どうにかこうにか無事に県道46号かもしかラインに抜けた。安堵とともにお腹がなる。
道の駅「かわうち湖」で「ひばっこそば」と「ホタテカレー」で腹ごしらえ。

「青森ヒバ」は「木曾ヒノキ」「秋田スギ」と並んだ日本三大美林のひとつで下北半島と津軽半島に多い。
とても香りのいい木で、その揮発成分は「ヒノキチオール」とのこと。
ヒバなのにヒノキチオールなのね。
青森ヒバの家はシロアリやカビにも強く、建ててから3年は蚊も寄りつかないそう。素晴らしい!
願わくばそんな家に住みたい。



仏ヶ浦を目指して西へ抜ける途中の道上に一匹の野生動物が佇んでいた。
車で近寄っても逃げない。
アライグマかな?
車から降りてカメラ片手に近寄っても全く動じない。
かわいいね~これアライグマだよね~
・・・まさかホントの熊の子供ってことはないよね・・・
子熊であれば必ず近くに母熊がいる。
写真を撮った後慌てて車に舞い戻る。
↓よくよく写真を見てみたらなかなか鋭そうな爪。

この直後には道のど真ん中に雉(キジ)が出現。
車を屁とも思わず、鶏のようにコッコッコッと首を振りながら悠然と横断していた。
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夏休み旅日記~8月15日・続き


↑浅虫温泉駅の道際の鉄柵には浅虫水族館キャラが連なる。

浅虫温泉の道の駅に車をとめて近くの「ろくさん食堂」へ。
記憶にあるだけでも3回は通ったこのお店はホタテの直売所を兼ねた食堂でホタテ丼やホタテ貝焼き定食はもちろん、うにとアワビの2色丼、3色丼、4色丼、海鮮ちらしや刺身定食など魅力的な地海鮮料理が格安で味わえる。前回来たときは満席でお店の人もあたふたしていたが、今回はガラガラだった。
「今日はすいているね~」と夫と話していたが、一組また一組やってきてあっという間に満席。
タイミングが良かった。
早々に運ばれてきたホタテ丼にがっつく。
「次回は2色丼を頼もう」と思いながらも何故かやっぱりホタテ丼を注文してしまう。
満足したお腹を抱えながら途中の永井久滋良餅店で好物の「板かりんとう」をお土産に買いこみ、浅虫温泉駅前の無料混浴露天(そう表示してある)の足湯に浸かる。やけどしそうな熱湯温泉だ。
道の駅で「黒房すぐりソフト」を食べ、大間のお寺で醸している「卍雫酒」という地発泡酒を買って出発。
黒房すぐり=カシスは青森が生産量首位。県内のメーカーがカシスジャムやカシスティーなど様々な製品を作っている。青森市内の有名なケーキ店「シュトラウス」が作った特産カシスを使ったケーキも黒房すぐり紹介パンフレットに載っていた。
原料生産をする農家、それを加工するメーカー、そして販売店それぞれが手腕を発揮してこそ地域特産の農産物は活かされる。


翌日16日は旅館泊まりなので、本日どこで車中泊するかが問題だ。
あてもなくとりあえず宿の方角、下北半島へ向かってうだうだと北上。

むつ湾に面した海水浴場で海に入って遊ぼうかと思ったが、家族連れで大混雑している様を見て意欲減退。菜の花名物の道の駅よこはまで、揚げたて菜の花ドーナツを試食し(買えって)、むつ湾産干しホタテ貝柱と巨大ホタテフライを購入。

恐山の麓町、むつ市へ。
恐山は以前一度行ったことがあるので今回はパス。
「暑い」ただそれだけの理由で行動意欲減退中。
牧場直営のミルク工房「ボンサーブ」でモカソフトと期間限定ヨーグルトソフトを購入。
「飲むヨーグルト試飲できます。」と書いてあるのに試飲品がない。
旅の恥はかきすてて店員さんに聞いてみたら新品の商品を開封してくれた。
店外の木の影で死んだように爆睡している山羊を眺めながら飲食。



アウトドアレジャーをしないとなると、食う飲む買うばっかりだ。
旅前に「今回は買い控えしよう」と決意したのにしこたまソフトを食べている。
それもこれも全てはこの猛暑のせいだ。
北国青森までやってきたのに容赦なく暑い。

宿泊予約した下風呂温泉の「長谷旅館」は、文豪・井上靖が宿泊して小説「海峡」を執筆した宿だという。
以前伊豆に旅する前に「伊豆の踊り子」を買った私。ここで「海峡」を買わない手はないだろう。
しかしむつ市街の本屋で探したがなかったので、新田次郎の「八甲田山 死の彷徨」文庫本を買った後、隣の食品スーパーをのぞいて、大畑産のイカを使ったイカめし¥150を2個と半額シールが貼ってあったむつ湾産のベビー(なのに大きい)ホタテ刺身を購入。



時は夕刻。今日どうする?この後どこ行く?どこで寝る?
という話をしている矢先の走行中、道路脇に「8月15日大畑港花火大会」の看板を発見。
15日って今日だよ~。今年はまだ花火見てないし、行ってみるか。



むつ市から北に10kmほどの大畑はイカ名物の港町。
側面にイカのイラストが描かれた消防車を見つけて思わずパチリ。
イカが消防ホースを持っている。おでこにはマーク入り。

日暮れまで1時間以上ある。
時間つぶしに立ち並ぶ屋台で花火見物のつまみを物色。
イカメニューの充実ぶりはスバラシイ。
「イカ串揚げ」1本¥80 イカのぶつ切りとピーマンを串刺しにしてフライの衣をつけて揚げたもの。
「イカミンチボール」紙コップ入り一杯¥150 イカゲソを刻んでお好み焼きのような生地に混ぜて肉だんご状に揚げたもの。
「イカぽっぽ焼」¥250 屋台の定番だがイカ自体がおいしい。

花火の前に盆踊りが始まった。
聞いたことのない津軽民謡。
音楽、踊りとも私の記憶にある盆踊りと全く違う。
私が子供の頃も、毎年8月14、15日は小学校で地域の盆踊りがあった。
聞きなれた民謡にあわせ、踊り上手な見知らぬおばさんの後ろにくっついて踊った。
踊りの形も至極単純だった。踊りの輪に入るとうちわをもらえた。
私が高校卒業したくらいからか、少子化で子供の数が減ったという理由で盆踊りは消滅した。
私の郷里、仙台とは全く違う盆踊り。
特に踊りは複雑で見ていても覚えられない。
そういえば今や超有名な秋田県西馬音内の盆踊りの踊りも、
この上ないほど複雑で幽玄で優美でハイレベルだった。
隣町は違う言葉を使っているという方言のようなもので、
わずか数km離れた町でも異なるほど、実は盆踊りって地域によって多種多様なのかもしれない。


予定より20分遅れで花火が始まった。
「大畑の春夏秋冬」をテーマとし、春・夏・秋・冬ごとに
それぞれ区切って司会者がナレーションする花火大会だった。
間隔が長くスローテンポな割に迫力のあるスターマインが多く、
足先は海、という港湾ぎりぎりに陣取って首を反らせながら目前の港に上がった
花火を見たので、尺玉は今まで見たことがないほど巨大に感じた。
充実したイカつまみシリーズを堪能しながら北国の花火大会を満喫。

大畑から内陸に入った薬研温泉に行く途中にたまたま見つけた
きれいなトイレ付きの広いパーキングで車中泊。
寝る前にホタテフライとホタテ刺しをつまみに酒を飲む。
なんだこれ!うまい!直径8cmほどはあるこのホタテフライ、
貝柱そのものにフライの衣がついているような感じだ。
だとしたらものすごく巨大なホタテだろう。

深夜にも頻繁に車が出入りしている。
街灯の下で昆虫採集している人が随分多かった。

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夏休み旅日記~8月15日



県道40号を北上。奥入瀬渓流なみに美しい熊ノ沢川を経由して八甲田山へ。
八甲田山雪中行軍遭難事件から105年を経た今。
遭難の地に巨大な銅像として凛々しく立つ後藤伍長は、行軍壊滅状態を本拠に知らせるべく胸まである積雪の中を一人突き進み、仮死状態で発見された後蘇生した。
未曾有の惨劇の中で偉業をなしたこの後藤伍長は、私の母の父の姉の舅である。
私にとっては血縁のない遠い親戚ではあるが、後藤伍長と同郷の宮城県栗駒市に現在も住んでいる祖母にとっては近い関係。
田舎なのであの辺一帯は皆親戚つながりがあるらしく、平成14年の遭難100周年の時には大型バスを借り切って栗駒近辺の一族郎党で八甲田に出向いたそうだ。後藤伍長はとても酒好きな人で、凍傷で両手両足切断しながらも両腕先で杯を抱えるようにして酒を飲んでいたという話を祖母から聞いた。

八甲田山死の彷徨
新田 次郎
新潮社

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むつ市の本屋で新田次郎の「八甲田山 死の彷徨」の文庫本を見つけたので買った。
悲劇のノンフィクションをおもしろいというのも何だが、ぐいぐいと惹きつけられて目を離せず一気に読みきった。親戚が関わっていることもあり、今回の旅の新郷村から田代を抜けて青森へ出るルートがまさに弘前三十一連隊の道程だったということもあるが、風化した過去のドラマという感は全くなく、非常におもしろい本だった。
新田次郎の本を読むのは実は初めて。他の著作も読んでみたい。

数年前青森を旅した時は無かった「八甲田山遭難資料館」なるものが幸畑に出来ていた。
赤松の巨木と桜の木がそびえる土手に囲まれて、静謐な空気が満ちているこの場所は、まさに遭難した五連隊の墓地だった。
階級ごとに墓碑が並び「近づきがたいものを感じた」と新田次郎も言っている。

3年前に出来たというこの遭難資料館も充実していた。
行軍の装備、服装、凍傷対策に足をくるんだ油紙や唐辛子なども展示され、また雪中で野営する時に掘った雪濠に身動き出来ないほど隊員がぎっしりとつまった様子の模型などもあった。

興味深く展示品ひとつひとつに顔を近づけて眺めていた。
ゴン。鈍い音が館内に響いて注目を浴びる。
ショーケースのガラスに気づかずおでこをぶつけてしまった。恥ずかしい~。
照れ隠しに夫に向かって「ぶつけちゃったよ~」とニヤけてごまかしたが、やっぱり私って鈍くさい。


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夏休み旅日記~8月14日続き



「キリストの里」新郷村は東北地方のどこかしこにもありそうなごく普通の山村だった。
突如「キリストの墓」の看板が道路上に現れる。
ここ、新郷村にはキリストの墓とキリストの弟のイスキリの墓が隣り合わせに存在する。
小山の上のこんもりとした古墳を思わせる二つの隆起。
これが「キリストの墓」であると断定できるとは言えないと思うが、必ずしも否定しきれない史実が存在するというのがコワイ。
この地の盆踊りの唄「ナニャドヤラ」が古代ヘブライ語では「御前(おんまえ)の聖名を褒め讃えん」という意味だとか。
東北弁ってフランス語の音に似てると私は思うのだが、私には理解出来ない青森弁を早口でしゃべられたら「ウニャウニャナニャドヤラ」とか聞こえるかもしれないな~。
新郷村の中心地の戸来や十和田湖東に位置する戸来岳の戸来(へらい)はへぶらいが訛った言葉だとか。
子供が生まれたら額に墨汁で十字のマークをつける風習があるとか。
一概に何とも言えないが、新郷村の隣の秋田県鹿角市には正体不明のストーンサークル群もあるし、未知なる空気の一筋が現代も流れている一帯であることは確かだ。



更に林道を奥に入っていくと「上大石神ピラミッド」「下大石神ピラミッド」がある。





鬱蒼とした森の小道を登った頂上にある巨石群。
むっとした暑気のさなか、下の方の石の間から冷たい風が吹き出ていた。

新郷村から直線距離で北に15kmほどの「道の駅奥入瀬」に行くべく、ルートを探す。
40km迂回して国道4号を通って十和田市から西に入る道が国道ずくめで手堅いだろうが、それではあまりに遠回り過ぎる。県道以下の一般道を真北に進んでいるつもりが道に迷うこと数回。途中閉鎖されていた道もあり。何だこれ~?そんなに深い山道でもないのに何でこんなにアクセス悪いのだ。結局分かりやすい幹線で遠回りするルートが一番早かったかも。

道の駅奥入瀬の売店で七戸高校で作られた「カシス(黒房すぐり)ジャム」を買って隣の地ビールレストランへ。
メニューを見ると「毎月第3木曜日は女性1000円で飲み放題」だって!
第3木曜って明後日16日宿泊予約した日ではないか!飲み放題でしこたま飲んで、そのままこの道の駅で車中泊プランが理想であった。あぁ~惜しい~!
しかし実際この日飲み初めてみたら、ヴァイツェン一杯とピッチャーで頼んだダークラガーで十分満喫できた。
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夏休み旅日記~8月14日


↑前日走行車中から撮った岩手山の夕景。

「道の駅やまがた」は標高の高い地にあるだけあって割合涼しく、ぐっすり安眠できた。
が、朝6時半に町全体に流れ始めた時報とラジオ体操の音楽に無理やり叩き起こされた。
寝ぼけまなこで時計を見つめる。まだ6時半だよ~あ~せっかく涼しいのに~もっと寝たい~早すぎる~。
今住んでいる静岡は朝の7時と12時と夕方6時に町の時報がなる。
以前住んでいた長野県旧鬼無里村でさえ朝の時報は7時。その後は10時と12時と3時と6時に時報が鳴り、夜8時45分から村内ニュースが有線で流れていた。
こういうの、都会に住んでいる人は一体何のことか分からないだろう。(かくいう私も仙台から長野に移住し、初めて朝の時報を聞いた時はびっくりして飛び起きた。)
町のいたるところに点在しているスピーカーから、チャイムや音楽や行方不明者のお知らせや翌日の村内予定行事ニュースが流れるのだ。田舎であるほど回数が多いのは、多くの人が戸外に出て畑仕事をしているからだろう。長野において10時と15時は「おこびる」=お小昼タイム。大切なおやつの時間だ。


道路上の気温表示は38℃を示している。ひ~ア~ヅ~イ~。
さすがにこの調子では耐えられない。どこでもいいからマトモな宿に一泊しないと体がもたない。
ということで、予め目星をつけておいた青森県は下北半島の先端近くの温泉宿に電話してみた。
「今日14日か明日15日、二人泊まれませんか?」
「今日も明日も一杯でして・・・明後日16日でしたら一部屋空いてますよ」
16日!?う~ん16日に下北半島に泊まって17日に仙台の実家に帰るのはキツイ。どうしよう~!?
・・・ま、いっか。最悪仙台に寄らないでそのまま帰路につけばいいのだ。
と心を決めて宿泊予約した。繁忙期でも、二人位ならキャンセルなどで空きがあったりするものらしい。

久慈市北の大野村へ。(今は合併で洋野町となったらしい)
「杜の都 仙台」「伝説の里 鬼無里」のように、日本の市町村にはその町の特色を一言で表すキャッチフレーズがついている。
ここ大野村は「一人一芸の里」。
ものづくり拠点「おおのキャンパス」に併設されている「道の駅おおの」へ。
北海道の置戸市同様、デザイナーの秋岡さんが提唱した木工の町だ。
空気のいい広々とした敷地内に、センスのいい木造の建物が並ぶ。
何かものづくりの体験メニューを予約してから行けば良かった。
いまひとつ深くのめり込めないまま、ミルクソフトと山ぶどうソフトを食べて後にする。
すぐに溶け始めるここのソフトはキメが細かくとても口溶けがよく、私的ソフトランクにおいてかなりヒット。

「ジャズと蕎麦の里 南郷」青森県南郷村を経由。
以前何かの雑誌で「もし田舎暮らしするならどこの土地がいいか?」というアンケート調査でここ南郷村がトップに位置したという記事を読んだ記憶がある。
夏には大規模なジャズフェスティバルが開催される。
道の駅なんごう内にあるジャズ喫茶でケーキセットを頼んでしばし上質な音楽に浸り、オトナの休息時間を過ごす。
南郷村名物の蕎麦セットをお土産に買い、ブルーベリーソフトを食べながら次なる町「キリストの里」新郷村へ。


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夏休み旅日記~8月13日・続き

すきっ腹を抱えてさらに北上し、岩手県紫波町の「ラフランス温泉館」へ。
我慢しきれず入湯前にエビスビールでからからに乾いた喉を潤し、
とろろ麦飯付きのひっつみ定食と冷やし坦々麺を注文。

岩手県で「ひっつみ」と呼ばれる郷土食は我が郷里、宮城県では「はっと」と呼ぶ。
小麦粉を水で練ったうどんのような生地を親指の付け根で平ためにちぎってゆで、
具材とともに煮て醤油で味付けた汁ものだ。
よく私の母親が作ってくれたのはナスとシーチキンと玉ねぎを具にしたもので、
あずきやずんだ(すりつぶした枝豆に砂糖で甘みをつけたあん)をかけた甘いバージョンもあった。
こちらで食べたひっつみは、しめじと豚肉とごぼうとセリを具にしたもので、ちょっと甘めの郷愁をそそる味付けだった。

カイロ団長 洞熊学校を卒業した三人 (ますむら版宮沢賢治童話集)
ますむら ひろし,宮沢 賢治
偕成社

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立派な施設の温泉に浸かり、広~い大広間でくつろぐ。
広い割に人のいる場所が片寄っているのは、皆日差しをさけているからだ。
日の入らない畳の上は満員なので、日の当たらない冷たい床の上にだらんと転がり先ほど宮沢賢治館で買ってきた本を広げる。
「ますむら版宮沢賢治童話集」賢治好きならご存知の方も多いはず。
これは漫画本なのだ。
猫を主体とした動物のイラストで描かれており、少々難解な箇所のある賢治の文体がするすると頭に入る。
それにしても「洞熊学校を卒業した3人」は以前小説で読んだ時もグリム童話のようだと思ったが、こうして漫画で見ると一層残酷な物語だ。食べて生き食べられて死する動物世界。

4号線を越えて東に進み、おなじみ「道の駅紫波」の「レストラン果里ん亭」
おなじみ「ケーキセット」と「ぶどうジュレ」を食べる。
やっぱりケーキ3種にコーヒー付きで350円は比類のないお得さだ。
紫波町通過の際は外せない。
そしてかき氷にミルクソフトが乗った「ぶどうジュレ」にするか、
それとも名物りんごソフトをオーダーするか迷った迷った。
りんごジュースを凍らせて作ったかき氷にりんごソフトを絞った「りんごジュレ」なんてのがあったらいいなー。あ、りんごクラッシュか?
それにりんごジャムでも添えてあったら文句なし。



そういえば温泉館から道の駅紫波に行く途中のラフランス畑を過ぎた住宅地の中に一軒のお肉屋さんがあった。
外見ごくごく普通のお店なのに、ひっきりなしにお客さんが来ていて大人気。
コロッケでもあったら買おうかなと店内に入ってみる。
優しそうな雰囲気のご夫婦がお客さんの好みに合わせて親切に説明している。
調理せずとも食べられるものを、と焼き鳥と豚足の煮込みを2本ずつ注文。
会計前に「食べやすいように切っておきますね」と言いながら大きな豚足を骨ごと縦半分に切ってくれた。ありがたいな~。
とてもいい感じのこのお店の名前は「肉のさんた」。
地元密着、こうして地域の人に愛されてお店は続いていくのだろう。


岩手県内陸北東の白樺林が有名な平庭高原にある地ビールレストランにギリギリ間に合うかもしれない、と車を飛ばして行ってみるも、るるぶ岩手に載っていた閉店時間の1時間前に着いたらすでにお店は暗かった。がっかりと肩を落としてその先の道の駅「白樺の村やまがた」に車を停め、豚足とレストラン果里ん亭売店で300ml瓶地酒よりどりみどり3本1050円で買った「菊の司」を晩酌して車中泊。
この日は何故か蛾が大量発生。
ちょうどお祭りをやっていた途中の町では、街灯を覆うほど蛾がたかり、道路上にまるで強風に吹かれて一気に散った枯れ葉のように蛾の死骸が散乱していた。これってちょっと普通じゃないよね?走行しながら夫と話していたら窓から助手席の私の膝に蛾が飛び込んできた。ぎゃー!・・・ん?白い。よく見たらこれってもしかして蚕の成虫?養蚕は山村で主に営まれてきた。昔この近辺で飼っていた蚕が野生化して一気に孵化してしまったのだろうか。
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夏休み旅日記~8月13日

現地の山に登ったり海に潜って遊んだりすることは長期旅行の楽しみのひとつだ。
雨の時は美術館や資料館などハコモノに駆け込む。
しかし晴天とはいえカンカンじりじりと陽光照りつけるこの猛暑の下でアウトドアレジャーを楽しむ気は起きなかった。そんな軟弱な我々はやっぱりハコモノへGO。



朝8時過ぎに宮沢賢治のふるさと、岩手県花巻市着。
開館と同時にまずは「イーハトーブ館」へ。
ここが良かった!去年の旅で見つけた小岩井農場資料館並に楽しめた。
入場料は無料でミニシアター、ギャラリー、カフェ、宮沢賢治の書籍やグッズのショップ、そして2階に図書館。
あーこういう施設が自分の住んでいる町にあったらいいなー。
そしたらカフェで働きながら日がな一日コーヒーを飲みつつ賢治本に没頭したい。


特に良かったのは、通常の映画館をそのまま小さくしたような立派な客席とスクリーンを備えたミニシアターで、宮沢賢治の原作本をアニメ化した映画を見ることができる。
一番のりで他にお客さんがいなかったので「雪渡り」と「虔十公園林」をリクエストして上映してもらった。

虔十公園林/ざしきぼっこのはなし (宮沢賢治のおはなし)
宮沢 賢治,はた こうしろう
岩崎書店

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知能の足りない青年、虔十が植えた700本の杉苗は、
虔十が死んだ後も立派に成長し続け、地元の人々に愛される杉林となった。
地域開発が進んでもその場所だけ虔十公園林と名づけて保存されることになった、という話。

木の命に比べて人の一生ははるかに短い。
自分が世を去った後にも残り、愛されて成長し続ける森林。
そして受け継がれていく思いや命。
時というものを自分の生涯を越えた「長い目」で見て今を生き、実行する大切さを思う。



このイーハトーブ館や宮沢賢治記念館はこんもりとした森の中にあり、
木洩れ日を浴びながら山の小道をてくてく歩くと、いたるところに道しるべがある。
シグナルの道の途中には「シグナルとシグナレス」を模した信号機など。
シンボルマークのふくろうはあちこちにひっそりと佇み、森の中に溶け込んでいる。
花壇設計にも造詣の深かった賢治の思いを継いで咲き誇る花々。
地面には賢治童話に登場する動物達がタイルアートで描かれている。
1日では足りないくらい楽しい森だ。




宮沢賢治記念館には10年前に1人で行ったことがあるが、
相変わらず大勢の来客数だ。外国人も多い。
2館共通券を購入し、記念館を堪能した後道向かいの「賢治村」へ。
こちらは記念館に比べたらお子様向きの施設かな。
広い野原に林立する複数の館内では音や光などの五感を使って賢治の世界を体感できる。

帰り際に入り口前の「セロ弾きのゴーシュ」の絵板に顔をつっこんだ夫を記念撮影。
なんだこの流し目は。怪しい~怪しすぎ。


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夏休み旅日記~8月12日

走行中に始終居眠りしている私でさえも出発早々暑気あたりでバテバテだ。
延々運転し続ける夫は睡眠不足と疲労により冗談も通じないくらいの有様で、
「どっか木陰に車を停めて昼寝しようよ」と福島県内陸部山間の道沿いにあった小さな公園に車を停めた。
昼寝する前に車を降りて公園内をひとめぐり。たった数分の間にどっと噴出した汗が背中を伝って流れる。ぎゃ~~ア~ヅ~イ~・・・
「夏は車のボンネットで目玉焼きが焼ける」と言われる福島県。(ほんとか!?)
とてもとても昼寝どころではない。
この日は仙台の実家の母は留守なので、仙台は素通りして更に北上しようと思っていたが、このままでは体がもたないのでやっぱり実家近くの叔母の家に寄って涼んでいくことにした。



車を停めて、叔母とともに近くの文具雑貨屋さん「STATIONERY STATION」さんへ足を運ぶ。
叔母行きつけのこのお店の店主さんは実は私と同じ高校出身の方だった。
郷里仙台を離れて早4年。同窓の方とご縁を持ったのはこれが初。
しかもSTATIONERY STATIONさんつながりで、私のお菓子やジャムをお取扱い頂いている仙台の雑貨屋さん「メリーズセレクション」さんのイラストレーター、佐々木洋子さんも先輩だということが最近判明!
う~ん世の中は広そうでやはり狭い。

文房具屋さんでカラフルなペンや紙やレターセットを眺めて入り浸ることは以前から好きだった。
波型に切れるハサミとか、エンボスマークを押せる器具?とか、そういうものは延々見ていても飽きない。
こちら「STATIONERY STATION」さんのすっきり整然とした店内にも思わず目を輝かせてしまう魅力的な商品の数々。
外国産の日付スタンプとか、かわいいイラスト入りの幅広テープとか、手当たり次第買いたくなってしまう。
中でもいいなと思ったのは「月光荘画材店」の、スケッチブックと和紙の手紙セット。
シンプルながら風合いがあって、その上お手ごろ価格。
日常生活にこそこういうものを側において活用したい。

叔母宅で出前のお寿司をご馳走になって息を吹き返し、さらに北上する。
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夏休み旅日記~8月11日


9日間の車中泊旅を終えて帰宅してみたら畑は水切れでカラカラ。
たわわに実っていた真っ赤な完熟トマトの甘さは極上。


長期連休前の多忙さは毎度のことだ。
10日金曜日の夜に出る予定は流れて、11日も冷蔵庫の中を片付けた後ごろり寝転んで高校野球を眺めていた。旺盛に繁った庭の木々を吹き抜けてくる涼しい海風は肌に心地よく、うつらうつらとしていたらあっという間に夕方に。
そうこうしていると段々旅に出るのが面倒になってくるので気を取り直して夕方6時出発。
夏休みは私の実家の仙台経由で東北・北海道旅行、冬休みは夫の実家の奈良経由で四国・九州旅行に出ることが多い。
今回も静岡の暑さを逃れて東北に避暑に行くことにした。
しかし。下道走行車中泊の旅のまず初日に泊まったのは埼玉県妻沼町の「道の駅めぬま」。
あろうことか今夏最高気温40℃超を記録した埼玉県熊谷市の隣町である。
うだるような暑さに耐え切れず夜中何度も目を覚まし、窓を開ければ蚊に翻弄され、夜が明けて更に太陽の熱気に見舞われた。
そろそろ若くもない年だし、いよいよ車中泊の旅をするのも限界かも・・・
夫と二人して意気消沈しつつよろよろと北上。
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夏休み終了~

2900kmの車旅を終え、昨夜無事帰宅しました。
片付けしつつボチボチ業務再開です~。
あ~それにしてもアヅイ~。
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