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こころの教え:欠点の多い自分がイヤになります

              欠点の多い自分が嫌になります。

                          高橋中学校三年B組稲本靖彦

先生、ぼくは何て欠点が多い者だろうと、つくづく自分が嫌になってきました。例をあげると、人の言う事には反対の為の反対をしてしまうし、人が少し叩いたぐらいで、カッとなってすぐ叩き返し、それが大喧嘩の元になることもあります。

特に音楽の時間などは、大月先生にいちばん迷惑をかけていると思うと、すまない気がします。今日は絶対に悪さをしないぞと思うのですが,つい悪をしてしまうのです。

先生これはぼくの性分なのでしょうか。努力すれば直す事が出来るでしょうか。もしこの欠点を直す方法があれば教えてください。ぼくは最善を尽して直したいと思いますから。

早くこの性分を直して立派な社会人になろうと思います。
先生お願いします。よい方法があったら教えてください。

                   ☆

        本人が本気で直そうとしない限り、どうにもなりません。

                   ①

稲木君、近ごろはいろいろ良く効く薬が出来ていて、たいていの病気は治せるようだが、ガンの薬と欠点を治す薬は残念ながら未だ良いのがないそうです。稲木君におすそ分けする良い薬があったら、君になんかやらないで、先ず私の悪い癖を全治させるんだが,残念ながら私もそんな薬を知らないんだ。


だが稲木君。欠点の病気は本人が本気で治そうとしない限り絶対どうにもならないことだけは確実です。幸い稲木君は相当本気になって自分というものを考えていてくれるようです。

これならきっと治ると思います。私のように50年かかってもかんしゃく病や、横着病が治らないのはもう、慢性になってしまっているのだろうけど、稲木君のは発病してから日が浅いのだし、しかも稲木君だけが特別というのではなく、どうも一種のはしか系統の病気で、誰でも一生のうち一度はかかる病気らしいから・・・

『反対の為の反対病』にしたって『かっとなり病』にしたって、『音楽の先生の言われる事をきかん病』にしたって稲木君の小さい頃からの病気ではなくて、みんな中学になってからの病気だと思います。

これは大人しくて真面目な人でも、丁度中学生の頃、大抵の人がかかる「はしか」のようなもので、これをこじらせると大病になって命を失うことにもなりますが、大抵は綺麗に治ります。・・②へ


欠点の多い自分が嫌になります

本人が本気で直そうとしない限り、どうにもなりません


稲木君のは今が盛りか、もう盛りを過ぎたところのようで、大抵きれいに全快すると思います。どうか安心していてください。

稲木君は若い人たちのなかに、のめもしないたばこをのんだり、うまくもないのに酒を飲んだり、変な服装をしたり、真面目な人をクソ真面目だとかなんとか悪く言ったり、年齢が上の人に文句を言ったりして威張っている人を見ることがあると思います。

ああいうのは、いろいろなものに反攻して、偉い者になったような気になっているのですね。人間は誰でも一度はそういう時代を通るのです。

これは小さい時から誰かのお世話にならなければ、一日も過ごせなかった者が、段々一人前になろうとするに連れて、みんなの世話から離れて独立しようとするこころの動きが出てきた証拠なのです。そんなことまで指図してもらわんでも、ぼくはやる力を持っているんだぞ、というこころが出てきた証拠なのです。

この時代を「なまいき時代」と言ったり、この病気を「なまいき病」と言ったりします。

けれどもだんだん力もないくせに空威張りして見たり何の経済力もないくせにお父さんやお母さんに反抗してみたり、女の子や女の先生のような弱そうな所でだけ強そうぶったりしている自分の姿が、いかにも赤ちゃんくさく、あわれに見えてくるようになります。

こうなると一歩前進ですね。稲木君はちょうど、この一歩前進時代に入ってきているようです。三年生の中でもまだ一歩前進が出来ないで、先生に反抗したり、学校の規則を破ってみたり、下級生に対して強そうぶったりしている人がありますね。

稲木君には、そういうのがだいぶん、馬鹿らしいことに見えるようになってきているはずです。それは稲木君がみんなより一歩前進しているからです。そのうえ嬉しいことは、稲木君の目は外側だけでなく、人からは見えない自分の心の中まで見える目のようです。これは素晴らしい事です。勉強の良く出来る人の中にも、他人の悪いところはちょっとのことでも見えて、良く人の批判をするが、自分の心の中は見ようともしない人があるものです、これでは、いくら頭が良くてもいけません。

稲木君は自分の心の中を見る目をちゃんと持ってくれています。これは大変な宝なんですよ。どうかそれをますます大切にしてください。
これを大切にしてくれさえすれば、君の気にしている病気なんかきっとすぐ治ります。

伸びようとする気さえあれば、どこまでも伸びる事の出来る『中学生時代』を『反抗病』や『なまいき病』に取りつかれて、粗末にしてしまわないよう、しっかり頼みます。


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