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中国時代劇ドラマ「清越坊の女たち~当家主母② 2021年

 

 「清越坊の女たち~当家主母」で中国ドラマ唯一大人の穏やかな恋愛を見せてくれました。とても美しい描写、きめの細かい演出と脚本と演技力が中国ドラマにもあるのだなあと驚いています。

 主人公の沈翠喜(しんすいき/ジアン・チンチン)と8話から登場した魏良弓(ぎりょうきゅう/マオ・ズージュン)の恋愛。落ち着いた大人の恋愛が穏やかに美しく儚くゆっくりと時には激しく情熱的に展開されていきます。

 沈翠喜は行方不明の夫の代わりに、孤軍奮闘して任家を切り盛りし織物業者をまとめ、官僚とうまく渡り合って均衡を保っていました。7歳の継子、秀山を次期当主として育てている沈翠喜に古老たちが退くよう促します。

 沈翠喜はどうしてよいか答えが見つからず雨の中一人たたずんでいました。そこへ秀山の家庭教師、魏良弓が居合わせて傘を差しかけるのでした。

 魏先生は心配そうに「大丈夫ですか?」

 沈翠喜はそれまでの頑張りや苦労が報われない虚しさで

 翠喜「書を読む魏先生ならご存じでしょうか?」「身を処するのはなぜ難しいのか(自分の置かれた境遇においてとるべき行動。どう動くべきか)」

 魏先生「身を処することはこの世で最も難しいことです」

 翠喜「先生でも?」

 魏先生「はい とても難しいです」

 翠喜「じゃあ仕方ない」

 魏先生「もしかすると少し楽にする方法ならあるやも」「来てください」

 2人は小舟に乗って世間の噂話を聞きます。あまりにもくだらない自分の噂話に、翠喜は大笑いしてしまいます。いつも威風堂々としていて厳しさだけの翠喜の笑い声に、魏先生は翠喜にそんな一面があったのかと驚き、翠喜はそれまでのうさが晴れたようでした。

 バックに流れる音楽も美しく、投げ出した傘が川面に浮かぶこのシーンが二人の恋愛の始まりです。

 出自が厳しくて辛い過去を持ち、病が重く余生が短い厭世的な魏先生。

 7歳の秀山に優しく丁寧に、時には崑曲を歌いながら学問へ誘い、翠喜の苦悩を理解する魏先生。その指導法に感動する翠喜。

 世を儚んでいるため、天才なのに芝居に夢中になり出世には全く興味がない魏先生。翠喜は会試の受験を勧めますが自分は向いていないと言い、どう思うかと問うシーンで。

 翠喜は「高潔かつ硬骨漢の先生には向かない」と

 魏先生は「その通りです。しかし人々は芝居に夢中になるのは知識人の面汚しだと」

 翠喜は「美しき物は人を魅了し鑑賞されるために創造され発掘される、貴賤の別はありません」

 魏先生「そうですね、貴賤の別をつけるのは了見の狭さ故です」

 翠喜「うん」

 二人の穏やかなやりとり。芸術への同じ考え方。

 一つ一つのセリフが心を打ちます。

 年上の翠喜に密かに恋をして翠喜の木彫りの人形を彫ります。それを見つけた翠喜の戸惑いと喜び。夫に愛されず寂しく過ごしていた翠喜の人生に、愛の火を灯した穏やかな魏先生の真心。素敵なシーンでした。

 翠喜は心を込めて魏先生への巾着を織ります。芸術的な作品なのに

 翠喜は「才能のかけらもありません」と謙遜します。

 魏先生は「己を卑下なさらず、世間は学のある少年を賞賛しがちですが、他人に成せない高みに達した方こそ敬服せねば。奥様は十分に緙絲(こくし)の天才と言えます。周囲のやっかみはお聞き流しに」

 魏先生は翠喜の一番の理解者として励まして、とるべき行動を見つけた彼女にアドバイスをしていきます。

 二人は誤解や世間の噂話、謀略に翻弄されてしまいます。

 辛い別れで魏先生は生きる気力もなくなり雪の上で行き倒れ、曾宝琴に助けられ彼女の屋敷へ身を寄せることになり、さらに重体に陥ってしまいます。病の床で翠喜への想いを断ち切れず、木彫りの人形を抱いて悲しい涙を流し血を吐いてしまいます。

 そんな魏良弓を放っては置けず、曽宝琴はライバルの翠喜に膝を折って面会を乞うのでした。翠喜はそれでも裏切られたと思い込み会おうとはしません。敵の罠かもしれない疑心暗鬼に。

 生死が分からない夫のいる身、ただでさえ女性蔑視の中、恋愛は御法度。翠喜と宝琴は崖に立ち賭けにでます。危篤の魏先生は裏切ってはいないと理解して、翠喜も命をかけて魏先生に会いに行きます。

 魏先生「夢か?」

 翠喜「ならばあなたと生涯で一度の夢をみたい。答えて?どうかしら?」

 魏先生「奥様私には医術の心得があり、この体ではもう冬を越せないかもしれない」

 翠喜「気持ちを聞きたいお願い」

 魏先生「生涯で一場の夢だなんてそれでいいのか?翠喜 無念ではないのか?」

 翠喜「あなた以外もう何もいらない命さえも」

 魏先生「なぜ己を苦しめる?」

 翠喜「苦ではない。儚なくてもいいの。夢も見ない人生などそのほうが辛い」

 魏先生「わかった。そうしよう。一場の夢でも構わない。あなたと共にいたい」

 翠喜と魏先生は美しい涙を流しながら、お互いを求めあい、道徳に背く行為、地獄に落ちるかもしれない、一場の夢にかけるのでした。

 15話で二人の心と心が結ばれた感動的なシーンです。

 魏先生の珠玉の言葉で翠喜は今後の人生を生きることになったと言えます。

 中国ドラマには珍しい恋愛の描かれ方です。こういうシチュエーションも作れるのか!と思うくらい。良い脚本家なのですね。

 共同脚本 劉 少軍、李 斌斌、周 佳偉

 共同監督 ワン・シャオミン グオ・ハオ

ドラマや映画では美しい恋愛模様を観せてくれる楽しみがあります。恋愛映画、恋愛ドラマと謳っていなくても最高に素敵な恋愛を描いていたりで感動します。これまでに観てきた中国ドラマにはそれがなく、恋愛のシーンでもぜーんぜん切なさがないのよねーと、諦めの境地。中国ドラマに胸キュンを求めてはいけないのだと思っていました。

60年以上映画やドラマや韓国ドラマ、少女マンガ、恋愛小説でこれまでに様々な恋愛模様を観てきました。私の「恋愛のシチュエーション」ベストテンに入ったのが「清越坊の女たち~当家主母」です。

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