1970年~1990年頃が筒美京平の絶頂期でした。素晴らしい曲を何百、いや何千と作ったのは脅威としか思えません。まさに神の手でしょう。時代はフォーク、ニューミュージックとシンガーソングライターが台頭してきたのに、それでもプロの職業作曲家として良質の音楽を提供しました。
1990年代以降は小室哲也などが大衆を魅了するようになってきました。小室以降のメロディラインは、筒美京平の自然な人間の感性に合ったのとは違う、何か不自然なメロディなのです。でもその不自然な曲が安室、グローブなどの新しいアイドルの曲となり、歌謡曲が変わってしまったと思います。
さらにおニャン子、モーニング娘、AKBと「集団アイドル」の時代がやってきて、プロデュースの形が変わり、歌手の個性は希薄になってしまいました。暮れになり、今年一年のヒットした曲はと考えても、何もメロディーが浮かびません。
演歌とジャニーズとAKBだけになってしまったので、アイドルを求める人や歌を求める人が、洗練されたK-POPのダンスミュージックに夢中になったり、1990年代の韓国音楽に興味が移るのも当たり前なのかもしれません。
一時代を作った文化が衰退を繰り返すのは歴史の必然でしょう。アメリカを見ればわかります。日本の1960年代から1980年代後半の頃までは音楽、ドラマ、映画と質の高い大衆文化だったのだなと思います。
筒美京平コレクションをあらためて見直してしまいます。手法、音楽性は超一流なのにヒット曲という枠だけで見られてしまいがち。しかしそれぞれのヒット曲は大衆のための最高の音楽で、「筒美京平の歌謡曲」として文化の歴史に永遠に燦然と輝くことでしょう。