マガジンひとり

自分なりの記録

人的担保 #4 — ストックとフロー

2018-06-27 20:37:55 | 亡国クロニクル
金利の計算というのはよく分らない。ナニ金・帝国金融の人たちは元金から瞬時に月いくらの何回払いで返済総額いくらというのを提示できるが、どういう計算なのか。複利でも、返済してゆけば、元金というのは減ってゆく筈だが、ウシジマくんに出てくる、不動産を下取りする業者によれば、銀行の住宅ローンというのは30年とか35年とかの長期にわたる、その最初のうちは金利分に返済が充当され、元金はほとんど減らないのだという。

かと思えば、固定資産税を滞納し、役所と相談して分割払いで払ってゆく場合は元金から充当してくれるとも聞いた。まあ、銀行っていうのは、いまの時代どれほど必要なのか疑問だ。貯金・預金っていうのは、いわば連帯責任。いざという時は1千万まで政府が保証してくれる。それを銀行が貸し倒れリスクを取って企業などへ貸し出す。リスクを取るのは自己責任。貯金と投資の違い。でも、前回の読書メーターで紹介した投資の本によれば、銀行だけでなく、証券も保険も、営業の人たちはわれわれシロウトに投資の指南をする能力なんてないんです。逆に、かぼちゃの件のスルガ銀行は、立場を悪用して業者と癒着し、個人投資家に億単位の債務を背負わせる。

この事件を機に、金融や不動産の業界事情を野次馬的に観察してゆくうち、ノルマで縛る成果主義であるとか、総合職と一般職みたいな男尊女卑の身分制度であるとか、長時間労働、セクハラやパワハラ、いずれにせよ、人間を完全に物資(ストック・在庫品・株)とみなし、キャッシュフロー(賃金・ノルマ達成のインセンティブ・投資用不動産の利回りや株の配当)で縛り付ける、金融と不動産に限らずわが国の資本主義に恨みとストレスが満ちあふれている因果関係をかいま見た次第—




木戸孝允は、何を聞いても呑み込みが早い人だったが西洋の政体では「個人の自由」が保障されていると聞いて、それだけはダメだ、日本の国民にそんなものを与えたらたいへんなことになる、と狼狽した。

幕末や明治時代の最初期に日本にやってきた外国人たちの日本滞在記を見ると、妙に尊大で交渉となると一向に要領を得ないが威儀だけは堂々としてお行儀の良いサムライたちに好奇の目を光らせる一方で、大半の日本人が、昼間から酒を飲んで、土埃のたつ横町で小博打を打ったり、ちょっと目を離すと小さな泥棒を働いたり、なにごとか都合が悪いことがあると、普段は気の良い人物が平気で嘘をついたりすることに呆然としている。
 ガメ・オベールの日本語練習帳_大庭亀夫の休日ver.5 — さよなら、フリーダム

はばたくキツネ @foxnumber6 6月26日
世間が思う「社会に居場所がある」の定義がほぼ「労働・婚姻」なのでそこの間違いを正していかないと駄目だということに至らない人間が多すぎる。


はてなとか、学識のある人が画像を使わず、文章だけで語り下ろすブログが苦手です。コンプレックスでしょうかね。しかし↑の記事は達意というか、2013年に書かれているが、昨今のわが国を射抜いている。

薩長土肥の明治政権は、西欧文明を取り入れるにあたり、その柱となっている「神」に替えて(忘れられていた)天皇制を立て、敗戦後もなお、自由と民主主義の形式だけ採用しつつ、強力な中央集権に基づく国家社会主義は温存され、復興と高度成長とバブルと失われた20年へと導いた。

幕末の、交渉は要領を得ないが威儀のみ堂々とした武士、利益のためなら平気でウソをつくこすっからい平民、いずれもそのまま平成の日本人の姿。『学問のすすめ』は当時の識字人口を上回る、世界的にも異例のベストセラーとなったが、この向学心はしかし向上心とは異なった。負け組になりたくない、ひたすらな現実主義ゆえ。戦後はこれが学歴社会であったり、企業や新聞テレビが福利厚生を担う、国民は自分の頭でものを考えないでよい現世利益的な全体主義に姿を変える。

オリンパスの巨額粉飾事件で、損失隠しを指南したとして逮捕された元野村証券の営業マンが、手記の中で、バブル崩壊し株価が暴落していた90年代前半、財テクの損失を抱えた有名企業に対し、元本を取り崩して配当を支払う「配当先取り商品」なるものを、デリバティブの扱いに長じた外資系証券会社が売り込んだという。後になって損失が拡大しても、配当の先取りによってその時の担当者が助かればよいという、日本の「武士」なんていうのは体面だけで、本質はこすっからいウソつきの平民と変らないことを見抜かれていたのではないか。

不動産サブリースの問題も同じ構造だ。投資家をフローで釣って人間ストックとする銀行は、自分たちも政府からそう扱われていて、政府の役人は銀行よりもさらに無能で無責任。金融庁は仮想通貨もスルガ不正融資も問題が大きくなってからの後追い。ほかの省庁も右へ倣えの忖度により上の役職ほど劣化腐敗。若いまともな人材は民間や外資へ転職。いずれアホノミクスの逆回転も手伝って、教育や医療といった生活の基本的な部分も米国と中国の企業に依存せざるをえず、なけなしのフローをむしり取られる社会が到来するに違いない—
コメント